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【感想】家族の大切さを実感する7つの短編集(辻村深月『家族シアター』)

人の心理を丁寧に描いた、心温まる作風の作家・辻村深月さん。

今回は“家族”に焦点を当てた7つの短編が収録された作品を紹介します。

『家族シアター』です。

「家族」で起こる、ささやかな大事件。いま一番旬な作家、辻村深月の最新文庫。息子が小学六年の一年間「親父会」なる父親だけの集まりに参加することになった私。「夢は学校の先生」という息子が憧れる熱血漢の担任教師は積極的に行事を企画。親子共々忘れられない一年となる。しかしその八年後、担任のある秘密が明かされる(「タイムカプセルの八年」より)。家族を描く心温まる全7編。(「BOOKデータベース」より)

子ども、親、祖父と様々な立場の主人公が登場する本作。その中でも、私がお気に入りの3つの物語を紹介します。

タイムカプセルの八年

小学校の先生になった息子の幸臣。彼が先生を志したのは、小学生時代の担任・比留間先生に憧れていたからだった。熱血で勉強以外も一生懸命に教えてくれる比留間先生は、生徒の人気者。しかし、八年後。彼のある秘密が明らかになって…。

大学教授で堅物な私。幸臣が小学六年生になった時に、親父会に参加させられることになる。人付き合いが嫌いな私は仕方なく参加することに。

それから八年後、息子が憧れていた先生の秘密が明らかになります。その秘密を巡って、親父会メンバーが奮闘するという物語です。

息子を思う親の気持ち。息子がきっかけでできた交友関係など、人と人のつながりが丁寧に描かれています。

そして、最後の最後に息子に関するある事実が出てくるのですが、これにはほっこり。親子っていいなって思える作品でした。

孫と誕生会

妻を失って一人暮らしをしていた俺。アメリカに住んでいた息子夫婦が、孫の実音と一緒に家に戻ってくることに。友人と仲良くできない性格の実音に、昔ながらの精神論を掲げる俺はイライラ。あることがきっかけで、友人の誕生日会に呼ばれた実音でしたが、その日事件が…。

孫と対立してしまうおじいちゃんの話。彼女の内弁慶な性格を理解できません。友人の誕生日会に呼ばれずに悲しがったり、クラスの中心人物に目をつけられてしまったりする孫の実音。

しかし、あることがきっかけで、友人の誕生日会にお呼ばれします。ただ、そこである事件が起こってしまうのですが…。

この事件を巡って起こる祖父と孫とのコミュニケーション。対立しているのは距離が近いから。家族は特別だということを感じられる作品です。

特に最後の一文は素晴らしすぎ!

タマシイムマシンの永遠

息子の伸太と妻の希美と一緒に帰省をしている俺。

赤ちゃんの頃の自分と魂だけを交換できるドラえもんのひみつ道具・タマシイムマシンを知っていたことが希美との出会いだった。

その彼女は、タマシイムマシンは実在すると言うが…。

たった17ページの話。題材はタマシイムマシン。(タイムマシンではありません)

このドラえもんの道具がきっかけで知り合った夫婦とまだ赤ちゃんの子どもに関する物語です。

子どもを育てる親の覚悟、愛情について感じられました。親はこんな気持ちで育ててくれてたのかななど色々と思いを巡らせられました。

結婚して子どもができて読んだら捉え方変わるんだろうな…。

まとめ

どれもこれも、家族の絆を感じさせてくれる物語。ここでは紹介しませんでしたが、姉妹愛・兄弟愛にフォーカスした作品もあります。

心温まりたいという時にはぜひ読んで欲しい、ほっこりできる短編集です!