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【感想】戦国時代を舞台にした日常の謎(米澤穂信『黒牢城』)

黒牢城

米澤穂信さん『黒牢城』を紹介します。2022年の本屋大賞ノミネート、そして第166回直木賞を受賞した作品です。

本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の軍師・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。デビュー20周年の到達点。『満願』『王とサーカス』の著者が挑む戦国×ミステリの新王道。

城内で起こる殺人事件や不思議な現象。戦国時代を舞台に、黒田官兵衛が探偵役として謎を解いていきます。

黒田官兵衛が安楽椅子探偵に

時は戦国時代。信長に反旗を翻したとして、有岡城に幽閉されることになった黒田官兵衛。援軍を待つばかりの官兵衛でしたが、幽閉した張本人の荒木村重が知恵を貸して欲しいと言います。

何と、有岡城で密室殺人が発生してしまったのです。雪が積もっているのに、殺人現場への足跡が見つからない。犯人はどのようにして、被害者を殺したのか。

そして、牢屋から出られない官兵衛は、どのようにして謎を解くのか。このような謎が4つ描かれる、連作短編集です。

日常の謎のような戦国ミステリ

古典部シリーズを筆頭に様々な日常の謎を提供してくれている米澤穂信さん。

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これまでにも様々な舞台で描いていましたが、今回は歴史ものという新しいジャンルでした。それでも、従来のような、先が気になるちょっとした謎が提示されており、とても楽しめます。

謎の解決までの経緯もいつも通り論理的にわかりやすく説明されているので、納得感も十分。ただ、歴史ものということがあり、歴史背景や説明言葉に難しさを感じることはありました。

ただ、それを差し引いても濃厚な謎解きであることは間違いありません。

最後に待っているのは大きな衝撃

1話完結の短編が4話収録されている本作。基本的にはすべての話でオチがついて、それぞれで楽しめるようになっています。

しかし、米澤穂信作品はそれだけでは留まりません。連作短編集であるからには、最後に作品全体を通じた驚きも用意してくれていました。

読んでいるとやはり薄々感じる謎ではあるのですが、なぜ官兵衛は敵である村重に知恵を貸しているのか。練りに練られたオチがそこには待っていました。

普段は時代ものの小説は読まないのですが、それでも読みやすく、先が気になるように作られています。

若干の読みづらさはあるかもしれませんが、ミステリが好きな方には十分楽しめる作品です。