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【感想】就活を通じて語られる葛藤と人間心理(朝井リョウ『何者』)

就職活動が解禁された6月。

学生から社会人の節目として、人生において大きなイベントの1つですね。

そんな就職活動を題材にした小説を今回は紹介します。

朝井リョウ『何者』です。

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。

光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから―。

瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。

だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて…。直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

就活を通じて描かれる人間ドラマがベースの物語なのですが、最後の最後にとんでもないことが待ち構えています。笑

就職活動に挑む5人の男女

主な登場人物は5人。

演劇サークルに所属している大学生、二宮拓人。

拓人とルームシェアをしているバンドマンの神谷光太郎。

光太郎の元カノで、アメリカ留学経験者の田名部瑞月。

瑞月の友人で、いわゆる意識高い系の女子大生、小早川理香。

理香と同棲をしており、就活などの縛られない生き方を志している宮本隆良。

考え方や性格は異なりますが、全員が就活生。(隆良はちょっと違いますが)

それぞれ将来に向けて企業の選考に臨みますが…。

就活と通じて見えてくる人間の歪み

この小説の肝は、人間心理の葛藤をキレイに描いている点でしょう。

自分の就職活動にうまくいっていない中で、エントリーシートが通過している友人を見た時。

表では「おめでとう」と言えるがそれは本心なのか?

友人が受けているのは会社は倍率が低いからうまくいっているだけだと思いたい。

ものすごくブラック企業に入ろうとしていると思いたい。

自己肯定をしたい人間の心の動きが事細かに語られています。

SNS(Twitter)が作中には登場しますが、まさに現実世界でもあるあるなことが語られており、きっと共感できる部分もあると思います。

新社会人になる前、成人とは別の視点で大人になる節目のタイミング。

自分とは果たして何者なのか?

答えのないこの問いに挑む就活生の物語はとても素晴らしいなと思いました。

葛藤だけではないよ

5人は内定を勝ち得ることができるのか?

就活を通じて人間として、どのように成長するのか?

物語を通じて何者なのか?を探す5人の葛藤はとてもキレイに描かれています。

しかし、それだけではありません。

ただの青春小説だと思っていたら足元をすくわれます。

私は見事にはまってしまいました。笑

もし途中で「あまり面白くないな」と思っても最後まで読むことをおすすめします。

きっと後悔はしないはず。

就活における苦しさ、人としての葛藤に共感をしつつ、物語を楽しんでください。