児童書として世に生み出された作品なのですが、全然児童書向きではない作品です。笑
自称神様の鈴木太郎は世界のすべてを知っている全知全能の存在。巷を賑わせている猫殺しの犯人が誰なのか?も難なく言い当ててしまう。そして、主人公の芳雄がいつ死ぬのかも。
神降市に勃発した連続猫殺し事件。芳雄憧れの同級生ミチルの愛猫も殺された。町が騒然とするなか、謎の転校生・鈴木太郎が犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだというのだ。鈴木の予言通り起こる殺人事件。芳雄は転校生を信じるべきか、疑うべきか。神様シリーズ第一作。(「BOOK」データベースより)
ネタバレなしの紹介は以下でまとめています。
【感想】神様の言うことは絶対!問題だらけの児童書(麻耶雄嵩『神様ゲーム』)今回は、本作のラストについて考察します。既読の方はご存じの通り「何でこの人が?」というオチなんです。その理由を考えてみました。
以下思いっきりネタバレなので、未読の方は注意してください!
英樹殺しの犯人は誰?
前提として、神様の言うことは絶対は揺るがないものとします。そうしないと収拾がつかないからです。なので、英樹殺しの犯人はミチルと誰かということになります。
ミチルの共犯者が誰なのかを考えてみましょう。作中では、犯人は自分の父親だと考える芳雄。
警察官である父は、芳雄からの電話ですぐに英樹が殺された現場に到着しました。しかし、それはすべてミチルと父が仕組んだこと。
父に電話するように仕向けたのはミチル。父を現場から一旦脱出させるためにみんなを遠ざけたのもミチル。そして、自分の足跡などの証拠があっても不思議ではない状況を作り上げた父。現場の状況から考えると父が犯人ということになります。
しかし、最後のシーンで天誅がくだったのは母親でした。では母親が犯人だったのか?
他の考察記事でも書かれていますが、母親が犯人の場合、隠れられるのは井戸の蓋の隙間。そんなところに身を隠すスペースなどあるのでしょうか。芳雄は母に似て小さいという描写もあったので、頑張ればいけるかもしれません。
ただ、それを確かめる術は読者にはありませんし、父親が犯人の方がまだ納得感はあります。
天誅の意味が違うのでは?
そこで私の考える結論は、犯人は父親で、母親の死が天誅だったというものです。作品の冒頭で、芳雄は両親の本当の子どもではないと神様から告げられます。
おそらく、芳雄は父親の子どもではないのだと思います。だから警官の父とは似ても似つかない体格や性格になってしまった。
自分の息子ではない、むしろ弱々しい子供を育てていかないといけない。これ自体が天誅だったのではないでしょうか。殺人犯を殺すことだけが天誅ではないはずです。
神様の考える、最も苦痛を感じる罰がこれだったと考えれば、少しは納得感を持てるかなというのが私の見解でした。
リドルストーリーは自分なりの解釈をするのも楽しいので、一つの意見として思ってもらえると嬉しいです。