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【感想】シリーズ第二弾!ストーカー女子高生が挑む5つの謎!(辻堂ゆめ『またもや片想い探偵 追掛日菜子』)

またもや片想い探偵 追掛日菜子

辻堂ゆめさんの新作『またもや片想い探偵 追掛日菜子』の紹介をします。本作は約2年前に刊行された『片想い探偵  追掛日菜子』のシリーズ2作目です。

【感想】ストーカー女子高生が難事件に挑む!(辻堂ゆめ『片想い探偵 追掛日菜子』)

高校生の日菜子は、日々〝推しゴト〟に大忙し。お気に入りの特撮俳優・越谷充の握手会に度々足を運び、限定グッズは必ず購入。SNSを駆使して、スケジュールから目撃談まで情報収集も怠らない。ある日、越谷が強盗致傷容疑で逮捕される。彼の全てを知り尽くす日菜子は、それが??罪だとわかり……。妹思いの兄・翔平と共に、事件の解決に動き出す。

追掛日菜子は、好きになった相手(“推し”)のことを徹底的に調べ上げて、ストーキング行為を働いている女子高生。本人曰く、推しに迷惑をかけないことをルールとしているそうだが、やっていることはストーカーです笑。

そんな彼女ですが、毎回毎回、推しが事件に巻き込まれてしまうという残念な体質でもありました。冤罪や事件の被害者となってしまった推しのピンチを救うべく、今回も日菜子が事件に挑みます。

前作同様に、今回も5つの短編が収録されている本作。『氷菓』『空飛ぶ馬』のような日常の謎を扱っています。

恋した相手が事件に巻き込まれる

5つの短編はどれも、日菜子が片想いした相手(“推し”)が何かしらの事件に巻き込まれる。そして、推しの無罪を晴らすため、被害者なら犯人を捕まえるために、日菜子は兄を巻き込んで謎解きをしていくという流れです。

そして最後には…。という一種の流れのある短編集です。『あの日の交換日記』や『いなくなった私へ』と比較すると、ライトなミステリ小説という感じですね。(作者の辻堂さんも作品ごとに2つの円になったとツイートされてます)

しかし、ライトと言っても適当なトリックやこじつけではないので、論理的に事件は解決されていきます。一緒に推理しながら読むのも楽しいかもしれません。

各話のあらすじと感想

前置きが長くなりましたが、次に全5話のあらすじを感想をまとめました!

ネタバレなしで各短編の紹介とおすすめポイントを紹介していきます。

特撮俳優に恋をした。

今回の片想い相手はスーツアクターの越谷充。戦隊ヒーローを演じる越谷にメロメロな日菜子は握手会に参加したり、限定グッズを買ったり、家までストーカーしたりとしていた。

そんなある日、越谷は強盗致傷容疑で逮捕されてしまう。「嵌められた」と訴える越谷だったが、現場証拠は彼が犯人であることを示していた。越谷のために、日菜子は真相を推理する。

犯人については何となく目星がつくものの、トリックまではわからず。勘違いしていた情報の裏では、実際には何が起こっていたのかがわかるとスッキリ。結構好きな謎解きでした。

お巡りさんに恋をした。

交番勤務のお巡りさん・村上恭一を好きになった日菜子。県警のサイトを読み漁ったり、交番前でうろうろしたり、今回もストーキングに勤しんでいた。ある日、日菜子の目の前で、村上は何者かに襲われてしまう。

犯人は誰なのか? 何のために事件を起こしたのか?

犯人は誰か?はわりとわかるようになっている話でした。どちらかというと動機の部分を考える作品ですね。頑張ればわかるようになっているので、真相がわかると「なるほど!」となります。

クイズ王に恋をした。

次の推しはクイズ王の若月海人。知能王というクイズ番組で活躍中の東都大学の学生です。ある日、日菜子は彼が出演するクイズ番組の観覧に参加できることになります。

心躍らせながら収録に向かったのもつかの間、そこで若月海人はカンニングをしていた。作られたエリートだったことが何者かに告発されてしまうのでした。

個人的には一番好きな話でした。謎の提示から解決までの流れが鮮やかです!

ヒントもわかるようにはなっているし、最後の最後で明らかになる、ある真実にも読みごたえがありましたね。

友達のパパに恋をした。

クラスメイトの父親・中村清隆にハマりだした日菜子。ラーメン屋の店主である彼にお金をつぎ込むため、お店に通い始めます。

そこである事件が起こります。「コバエが入っている」と1人の客が騒ぎ始めたのです。これをきっかけにお店は炎上状態へ。しかし、日菜子は少し違和感をおぼえるのでした。

衆人環視の中で、犯人はどのようにコバエをいれたのか?がメインの謎。言われてみれば納得のトリックと、事件の裏に隠された別の真相も楽しめました!

人間国宝に恋をした。

今回の推しは人間国宝の久次米辰治。日菜子は彼の作品の見学や窯を見に行っていました。これまでとは違い、推しに何も事件が起こらなかったと思ったのもつかの間、事件が起きてしまいます。

辰治が弟子の作品を盗んだとして、世間から非難されてしまう。辰治は罪を認めて引退を表明。しかし、日菜子は納得がいっていないのでした。

蓋を開けてみればなんてことのない話でしたが、少々入り組んでいましたね。謎自体では真相が最も気になった作品でした。どうやってまとめるのかなとも思ってましたが、最後には良い感じのオチもあり、キレイにまとまってましたね。

ライトだから読みやすい!

本作はギャグ要素もあり、かなりライトな小説なので、活字になれていない人でもすぐに読めます。私も買ってから2日足らずで読み終えてしまいました。

突拍子のない発言を連発する日菜子と、兄の翔平のツッコミが相まって、二人の掛け合いはテンポの良い漫才のようにも感じられます。(特に「VODは実質無料」みたいなセリフがめちゃめちゃツボでした笑)

余談ですが、先日の読書会で著者の辻堂さんが「藤崎翔さんは自分にはないものを書いている感じ」と仰ってましたが、コメディ感は割と似ている印象を持ってます。(藤崎翔のオススメはこちら

【感想】神様は極悪人なのか?ゆるいテンポの先にある驚愕のラスト(藤崎翔『神様の裏の顔』)

笑いあり、驚きありで読みやすい短編集。気になった方は是非手に取ってみてください!

前作の感想はこちらから

【感想】ストーカー女子高生が難事件に挑む!(辻堂ゆめ『片想い探偵 追掛日菜子』)