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【感想】怖さがクセになる!奇妙な10の短編集(今邑彩『鬼』)

どこか不気味でゾッとする物語。たまに読んでみたくなりますよね。「世にも奇妙な物語」のような作品はついクセになってしまいます。

過去には以下の作品集も紹介していました。

【感想】短編集に迷ったらこれ!6つの奇妙な物語集(道尾秀介『鬼の跫音』) 【感想】ゾッとする読後感!13編の奇妙な物語(辻村深月『きのうの影踏み』)

今回もそんな不思議な世界観をまとった、味のある短編集を紹介します。

今邑彩『鬼』です。

引きこもっていた息子が、突然元気になった。息子を苛めていた子が、転校するというのだが…「カラス、なぜ鳴く」。かくれんぼが大好きだったみっちゃん。夏休みのある日、鬼になったみっちゃんは、いつまで待っても姿をあらわさなかった。そして、古井戸から…「鬼」。他、言葉にできない不安、ふとした胸騒ぎ、じわじわと迫りくる恐怖など、日常に潜む奇妙な世界を繊細に描く10編。ベスト短編集。(「BOOKデータベース」より)

全部で10の短編が収録されている本作。中でも面白かった3つをここではネタバレなしで紹介します。

子どもの頃の夏休み。いつもかくれんぼをしていた仲良し5人組。しかし、いつも通りかくれんぼをしている最中にみっちゃんが死んでしまいました…。時は経ち高校生になった1人のもとに、みっちゃんが現れますが…。

完全なホラーですね。かくれんぼの最中に死んでしまった女の子。時が経ってから現れた彼女ですが、見つかった人は直後に死んでしまう。

みっちゃんに見つかることに怯える面々でしたが、実は彼女が現れるのには理由がありました。

そういうことねとなると同時に、ラストの終わらせ方は秀逸だなと感じました。そこに行き着くまでのかくれんぼの対比もお見事です!

悪夢

「臨床心理士」になった私に同窓会で再会した友人がある依頼をしてきました。それは、妻が子どもを殺す夢を見てしまうというもの。妊娠中で子どもの出産を控えていた彼女のマタニティブルーかと思いきや…。

最後の最後に待っていたオチが素晴らしい!

「あーそういう展開になるのね!」と思わず唸ってしまいました。笑

気付けなかったのが悔しいですね…。謎を解く過程の中できっちりと伏線は張られていて、謎が解決したと思ったらまさかの展開へ。

個人的には10作の中で1番好みの物語でした。

蒸発

両親と大喧嘩をした翌日。一郎が目覚めると家には誰もいなかった。それどころか、彼は「消えろ」と念じると人を消せる能力を身につけていた。良い気になっていた一郎も、さすがに夢だと思っていたのだが…。

皮肉たっぷりのブラックユーモア作品でした。ドラえもんの「どくさいスイッチ」に似たような設定だと感じましたが、オチは相当なものですね。笑

作品内での設定がきっちりしていて、それが最後に効いてくる。個人的には大好きなラストでした。

まとめ

どれもこれも最後の最後まで楽しめるのに長くない。40ページ程度で1作品が終わるのでスラスラ読めます。短編集で困った時にはぜひ読んでみて欲しいです!