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【感想】先が読めない新感覚ミステリ(太田忠司『麻倉玲一は信頼できない語り手』)

太田忠司『麻倉玲一は信頼できない語り手』を紹介します。

死刑が廃止されてから28年後。日本に生存する最後の死刑囚・麻倉は、無人島だった離島に設けられた民間経営の刑務所内の特別拘置所で、刑を執行されることなく過ごしていた。フリーライターの熊沢は、彼に関する本を執筆するため、麻倉本人からの指名を得て取材に向かう。そこでは恐ろしい事件が起きた……。読者の予想を覆す奇想ミステリーの問題作!

死刑が廃止された日本。最後の死刑囚を取材するために、フリーライターの熊沢は、彼が収監されている島を訪れます。しかし、そこである事件が発生してしまうのでした…。

日本最後の死刑囚への取材

フリーライターの熊沢は、日本最後の死刑囚・麻倉玲一を取材するために、木菟啼島を訪れます。ライターとしての日の目を浴びていない熊沢。

彼は日本最後の死刑囚の本を出版することで、一発当てようとしていたのでした。殺人犯との対面に緊張をする熊沢でしたが、見た目はイケてる中年男性という感じ。想定と違う様子に面を食らいます。

しかし、彼はこれまでに何人も殺している犯罪者。人の心をコントロールする、人を惑わすことに長けている人物だったのでした。そして、熊沢も振り回されてしまい…。

麻倉の独白で進む物語

本作は麻倉がこれまでに犯した罪の独白という形で進んでいきます。その中で4つの事件が語られるのです。彼はなぜ人を殺したのか。殺害方法や動機などを含めて、淡々と語っていきます。

『羊たちの沈黙』のハンニバル博士を彷彿とさせるような、薄気味悪さと知能の高さを垣間見れます。

昔話をする麻倉。しかし、事件の核心に触れていなかったり、どこか嘘のような雰囲気を持っていたり、話がつかめないまま進んでいきます。

麻倉は自分に何を書いて欲しいのかわからないまま日々が過ぎていく。そんな状況に少しの戸惑いを感じる熊沢でしたが、ついに事件が起こってしまうのでした。

思っていたよりもオチは弱いかも…

これは個人の感想ですが、正直オチは思っていたよりは弱かったです。タイトルに“信頼できない語り手”とあることで、ミステリ好きの自分としてはかなり期待が高まってしまいました。

麻倉はどんな人物なのか。何のために人を殺したのか。そもそも、彼はなぜ熊沢に取材をさせようとしたのか。謎が興味をそそるので、先はとても気になる感じでした。

どんどんページをめくってしまうくらいに、魅力があふれる作品でしたが、期待が大きかった分、少しオチは弱く感じてしまいました。

驚きがないわけでありません。「そういうことか!」と驚きはあるものの、少し肩透かしな印象がありました。これは好き嫌いが別れる気がします。ただ、先が気になる面白い作品であることは確かです!