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【感想】異国の地で描かれる異質な5つのミステリ短編集(梓崎優『叫びと祈り』)

梓崎優『叫びと祈り』を紹介します。

砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦、ロシアの修道院で勃発した列聖を巡る悲劇……ひとりの青年が世界各国で遭遇する、数々の異様な謎。選考委員を驚嘆させた第5回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据え、美しいラストまで一瀉千里に突き進む驚異の連作推理。《週刊文春》ミステリーベスト10国内部門第2位をはじめ各種ミステリ・ランキングの上位を席捲、本屋大賞にノミネートされるなど破格の評価を受けた、大型新人のデビュー作。

5つのミステリ短編集。基本的には1話完結の短編ですが、最後には物語が繋がるようになっています。仕事で海外を転々とする主人公の斉木を探偵役に据えて物語が進んでいきます。

それぞれの短編にビックリするようなオチが用意されており、かなり楽しめました。今回もネタバレなしで紹介していきます。

砂漠を走る船の道

海外の集落を取材しにやってきた斉木。彼は塩を運搬するための砂漠行脚に同行することになります。

しかし、その道中で集落の長が不慮の事故で死んでしまいます。そしてその日の夜、別の人間が刺殺体となって発見されます。犯人は何のために、なぜこんな状況で殺人をしたのか?

意外性は本作の中では1,2を争うレベル。とにかくビックリするような真実が明かされます。こういうミステリもあるのかと感じる新しさと、驚愕の内容でとにかく最高でした。

しかも、上で言った以外にも仕掛けがあって、最後まで楽しませてくれました。

白い巨人

斉木と学生時代の友人たちは旅行でスペインを訪れます。そこで友人のサクラは、昔の彼女との思い出話を語ります。そこには、ちょっとした謎がありました。

日常の謎要素が強めな作品。正直、ずっと提示されていた謎については少しインパクトが弱いかもしれません。

しかし、本作も本筋の謎以外で大きな驚きを用意してくれていました。私としてはこちらのネタの方が衝撃が強かったです。

凍えるルーシー

修道院を舞台にしたミステリ。取材でここを訪れた斉木でしたが、その日に修道院長が殺害されるという事態に直面します。

犯人はどのように、そしてなぜ彼女を殺害したのか。

こちらも動機にフォーカスを置いたミステリ。そこには恐ろしく、まったく共感できないような理由がありました。1話と同じく、かなり衝撃的な動機で、怖くなりました。

また、私はこの話が1番好きかもしれません。というのもラストシーンがかなり印象的なのです。これまでの2作とも、あとの2作とも違った後味を残しているのが本作です。

読後のどういうことなんだろうと考えさせる感覚がたまりませんでした。

叫び

エボラ出血熱の感染拡大に見舞われている南米の集落を舞台にした作品。残念ながら死を待つしかない状況のこの地域で、殺人事件が起こります。

わざわざ殺人をせずとも、全員死ぬことは決まっていた。それなのに犯人はなぜ殺人をしているのか。

テイストとしては1話目に近い物語。動機のなぜを問うミステリです。こちらも1話目同様に想定外の展開が待っています。

読んでいると何となく想像はできるかもしれませんが、その通りだった時の気味悪さと衝撃は一級品でした。

祈り

この作品についてはあらすじ説明はなしにします。(ネタバレ防止のため)

本作の締まりとなる作品。全体のオチとして描かれるので、最後にはどんでん返しを用意しています。なので、この話は物語の最後に読むようにしてください。

ただ、これまでの作品と比較すると、少しインパクトは弱め。書店で激推しされていたので、期待が高かったこともありますが、もう少し想定外のオチを待ってしまいました。

ただ、これまでの短編(個人的には1,3作目)が、かなり衝撃的な展開なので、それだけでもオススメはオススメです!