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【感想】サイコパス教師の恐ろしさ…心霊ではないホラー小説(貴志祐介『悪の教典』)

ホラー作品と言えばどのような物語を想像しますか?

心霊などの超自然現象を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、人間の怖さを題材にした作品もたくさんあります。その第一人者と言えば、貴志祐介さんでしょう。

貴志作品の中でも人気で、映像化もされている作品を紹介します。

貴志祐介『悪の教典』です。

晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAから信頼され彼らを虜にしていた。そんな〝どこから見ても良い教師〟は、実は邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作長編。(「BOOKデータベース」より)

人気教師に隠されたある秘密

舞台は東京の高校。英語教師の蓮見聖司・通称ハスミンは、生徒や同僚、保護者から人気を集めていました。

しかし、その彼にはとんでもない秘密が。自己保身のためなら手段を選ばない、サイコパスだったのです。

人気教師を演じながら、自分にとって面倒な人間がいると排除をする。恐ろしい人間でした。そんな彼の経歴を不審に思った同僚教師。裏で何かをしていると怪しむ生徒たち。ハスミンの秘密に迫ろうとするのですが…。

ハスミンの怖さ

本作は、基本的にはハスミンの視点で物語が進んでいきます。彼がなぜサイコパスになってしまったのか。邪魔者を排除するに至るまでの思考やその方法が恐ろしいです…。

自分の身が危うくならないように立ち回る。合理的ではあるものの、倫理観が完全に欠如している言動ばかりです。

娘がいじめられていると難癖をつけてくるモンスターペアレントを事故に見せかけて殺害したり、自分に疑いを向ける生徒を手にかけたり。

人間であっても自分の邪魔者は“もの”としか考えていない。そして、絶対に失敗しないように行動する、まさにサイコパスな英語教師でした…。

ラストシーンも印象的

上下巻の本作。先に紹介した内容が上巻で描かれており、ハスミンの幼い頃や人をためらわずに殺せるといった話が出てきます。ここまでで、蓮見聖司という人間の異常性を十分に理解できます。

そして下巻。ある出来事がきっかけで、ハスミンは、自分のクラスの生徒を全員殺害すると決めるのでした。逃げ惑う生徒(&助けようとする先生)VSハスミン。最後に生き残るのは…。

ただのデスゲームとは違い、最後の最後には伏線が回収されるので面白かったです。

また、ラストシーンまでハスミンは異常でした。文字を追っているだけなのに恐怖を覚えます。

映画も面白いのですが、小説の方がハスミンの異常性や完璧な立ち回りが描かれています。活字に抵抗がないのであれば、ぜひ小説を手に取ってほしいなと思います!