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芥川賞と直木賞の違いを解説!おすすめ作品と一緒に紹介

芥川賞と直木賞の違い

毎年、1月と7月になるとテレビでも取り上げられ、世間で話題になる文学賞、芥川賞と直木賞。本をあまり読まない人でも名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。

しかし、この2つは何が違うのか?

聞かれて正確に答えることができる人は少ないでしょう。今回は日本を代表するこの2つの文学賞の違いと、それぞれのおすすめ作品を紹介します!

芥川賞と直木賞の違い

さっそく違いの説明をしていきます。簡単に言うと、芥川賞は純文学を対象にした賞。直木賞はエンターテインメント性に富んだ作品を対象とした賞。こういった違いがあります。

しかし、これだけでは不十分なので、それぞれの賞について具体的に説明をしていきます。

芥川賞とは?

まずは芥川賞から。正式名称は芥川龍之介賞です。

公共財団法人日本文学振興会のホームページによると、対象となる作品は「雑誌(同人雑誌を含む)に発表された、新進作家による純文学の中・短編作品」とあります。

純文学作品が対象というのは前述の通りですが、新人を対象とした賞となっています。また、長編作品は対象とはなりません。

そして、雑誌で発表されている作品なら対象となるので、書籍として刊行されているかどうかは関係がないです。

直木賞とは?

続いて、直木賞についての説明です。正式名称は直木三十五賞。

公共財団法人日本文学振興会のホームページによると、対象となる作品は「新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)」とあります。

芥川賞との違いとしては、エンタメ性のある小説が対象という点。そして、長編小説もしくは短編集が対象となっています。こちらは書籍として出版されている必要があるようです。

なお、芥川賞では新人が対象でしたが、直木賞は中堅作家までが対象となっています。直木賞では、名前の知られている作家がノミネートしている印象があるかもしれませんが、あながち間違いではありません。

純文学とエンターテインメント作品の違いとは?

ここまでを読んで、そもそも純文学とエンターテインメント作品とは何が違うのかと思った人もいるかもしれません。選考基準の話に移る前に、こちらをお話します。

正直なお話をすると、明確な違いがあるわけではないと思います。純文学は芸術性を重んじているとよく言われています。エンターテインメント作品はその名の通り、娯楽性に主体を置いています。

作品の美しさを描いているのが純文学面白さに焦点を置いているのがエンターテインメント作品というイメージです。もちろん、純文学にも面白い作品はたくさんあります。

夏目漱石や太宰治、村上春樹のような作品が一般的には純文学と呼ばれるとイメージしてもらえるとわかりやすいでしょう。(村上春樹さんは難しいところかもしれませんが…)

そのため「芥川賞の方がすごい」や「直木賞の方がすごい」ということはなく、どちらもすごいですし、そもそも比べられるものではありません。

各賞の選考基準

さて、ここまでの話を踏まえて、各賞の選考基準をまとめたいと思います。

■芥川賞(正式名称:芥川龍之介賞)

・創設者:菊池寛(文藝春秋の創設者)

・創設年:1935年(昭和10年)

・選考時期:毎年1月と7月(年2回実施)

・ジャンル:純文学

・長さ:中編もしくは短編

・対象者:新人作家

・選考会場:新喜楽1階

・正賞:懐中時計

・副賞:100万円

■直木賞(正式名称:直木三十五賞)

・創設者:菊池寛(文藝春秋の創設者)

・創設年:1935年(昭和10年)

・選考時期:毎年1月と7月(年2回実施)

・ジャンル:エンターテインメント作品

・長さ:長編小説もしくは短編集

・対象者:新人作家~中堅作家

・選考会場:新喜楽2階

・正賞:懐中時計

・副賞:100万円

ここまでの説明の通り、ジャンル・作品の長さ・対象となる作家は異なりますが、選考時期や賞品などは基本的に同じです。選考会場はどちらも築地にある新喜楽ですが、芥川賞が1階、直木賞は2階と分かれています。

さて、少し話が逸れますが、芥川賞と直木賞を両方受賞した作家はいるのでしょうか?

これまでの歴史上、両方受賞した人はいません。というのも、片方を受賞した作家は、その後はどちらの賞にもノミネートされないことになっているからです。

つまり、両方を受賞するには、同時期に両方の賞にノミネートされ、その時に両方を受賞する以外には無理なのです。

これまでにダブルノミネートされた作品は以下の4作品のみです。

第21回(1949年の上半期)中村八朗『桑門の街』
第25回(1951年の上半期)柴田錬三郎『デスマスク』
第28回(1952年の下半期)松本清張『或る「小倉日記」伝』 ※芥川賞を受賞
第39回(1958年の上半期)北川荘平『水の壁』

どの作品もダブル受賞には至っていません。ダブルノミネートは最後にあってから100回以上出ていません。おそらく両方を受賞することはほぼ不可能でしょう。

芥川賞のおすすめ3選

まずは芥川賞のおすすめ小説を3つ紹介します。恥ずかしながら、芥川賞の作品はあまり読めていないのですが、読んだ中で、面白いだけでなく考えさせられた作品をピックアップしました。

1.村田沙耶香『コンビニ人間』

「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて…。現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

コンビニで働いている時だけ、自分は世界にいられるということを実感する女性の物語。短い物語ですが、気づきの多い一冊。

主人公視点で見ると、すごく嫌なキャラクターが出てくるのですが、実生活では自分がそっち側かもしれない。

異質な世界観を通じて普通とは何か?を考えさせられる。読み始めたら作品に没入していること間違いなし。思うことがたくさんある素敵な物語です。

2.今村夏子『むらさきのスカートの女』

「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導し……。ベストセラーとなった芥川賞受賞作。

「むらさきのスカートの女」と仲良くなりたい「わたし」は、あの手この手を使って彼女と近づこうとする。彼女との出会いを通じて描かれるのは、ちょっと恐ろしくて不気味な人間ドラマ。

最後には「え?」となる驚きとともに、ゾッとしてしまう部分もある。なのに、今まで何を読んでいたのかを考えたくなる。そして、気付けば世界観に没入している。そんな魅力が詰まった不思議な作品でした。

3.宇佐見りん『推し、燃ゆ』

逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し——。デビュー作『かか』は第56回文藝賞及び第33回三島賞を受賞(三島賞は史上最年少受賞)。21歳、圧巻の第二作。

ファンを殴った“推し”が炎上をした。主人公の高校生・あかりは、推しが炎上をしたことによって生活にちょっとした変化が起こる。

当事者ではないのだから、あかりたちファンに影響があるわけはない。しかし、推しがすべての彼女にとっては、事件による影響は自分にも関係のあることだった。

推しという存在を通じて現代をキレイに表現している物語。SNSのリアルや、共感はできないけど、気持ちはわからなくないという主人公の心理が素敵でした。

直木賞のおすすめ3選

続いては、直木賞のおすすめ小説を3つ紹介します。直木賞はエンターテインメント性を重視している作品に贈られる賞です。

そのため、先が気になる謎続きを読みたくなるような展開を用意している小説が多いです。今回はその中でも特に面白いと感じた小説を紹介します!

1.東野圭吾『容疑者Xの献身』

天才数学者でありながら不遇な日日を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

ガリレオシリーズの3作目。トリックとストーリーとのリンクが素晴らしい物語です。天才数学者の石神は、湯川(ガリレオ)のかつての親友。彼が仕掛けたアリバイトリックを湯川はやぶることができるのか。

ミステリとしてのレベルもさることながら、湯川と石神の二人を中心に描かれる人間模様が美しすぎる物語。最初から最後まで一切飽きが来ない。まさにエンターテインメントに富んだ極上の一冊です。

2.朝井リョウ『何者』

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから―。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて…。直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

就職活動という人生における重大なイベントを通じて人間心理の葛藤をきれいに描いている物語。

自分の就職活動はうまくいっていない。その横で友人は内定をもらっている。その時に口から出た「おめでとう」は心から言えた言葉なのか。

友人が行こうとしている企業は大したことのない企業だと思いたい。そんな自己肯定をしたい人間の心の動きが語られています。

そして、最後にはちょっとしたオチがあるので、気を抜かずに読み切ってください。

3.島本理生『ファーストラヴ』

父親殺害の容疑で逮捕された女子大生・環菜。アナウンサー志望という経歴も相まって、事件は大きな話題となるが、動機は不明であった。臨床心理士の由紀は、ノンフィクション執筆のため環菜や、その周囲の人々へ取材をする。そのうちに明らかになってきた少女の過去とは。そして裁判は意外な結末を迎える。第159回直木賞受賞作。 (「BOOK」データベースより)

父親を殺した女子大生。彼女はなぜそんなことをしたのか?

調べるにつれて明らかになっていく、彼女の家庭環境。父親殺しの背景にあった秘密が少しずつ明らかにされていき、最後には意外な結末を迎える。

人間関係に重きを置いたミステリです。本格的なミステリとは違うテイストなので、人間ドラマとしても素晴らしい物語となっています。