実写映画化もされているホラー小説、澤村伊智さんの『ぼぎわんが、来る』を紹介します。
“あれ”が来たら、絶対に答えたり、入れたりしてはいかん―。幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。それ以降、秀樹の周囲で起こる部下の原因不明の怪我や不気味な電話などの怪異。一連の事象は亡き祖父が恐れた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか。愛する家族を守るため、秀樹は比嘉真琴という女性霊能者を頼るが…!?全選考委員が大絶賛!第22回日本ホラー小説大賞“大賞”受賞作。(「BOOK」データベースより)
ぼぎわんという正体不明の化け物に追われることになってしまった家族の物語。あまりにも強大な存在が迫ってくる緊迫感にはドキドキが止まりませんでした…。
ネタバレなしで作品の紹介をしていきます!
幸せな男性のもとに訪れる恐怖
本作は3つの章で構成されており、それぞれで語り手が異なります。
最初の章は田原秀樹という男性の視点で話が進んでいきます。彼は新婚で、子どもも授かったというまさに幸せ状態にいるのでした。
しかし、彼には子ども時代にある奇妙な体験をしていました。それは、祖父の家にいた際。何者かが玄関で呼んでいるのです。何者かはどうやら人間ではない異質な存在のようでした。
子どもながらに多少の恐怖を感じた秀樹でしたが、頭からはすっかり抜け落ちていました。そして、幸せを掴んだ現在。あるおかしな出来事が起こります。
娘が生まれる前で、誰にも娘の名前を教えていない時のことです。会社の部下が、娘の名前の件で電話があったと伝言をしてきたのです。ここに端を発し、謎の化け物が秀樹のもとへ迫ってくるのでした…。
第二章で物語が違った姿を見せ始める
ぼぎわんという化け物をどのように追い払ったらよいのか。秀樹は家族を守ることができるのか。こんな緊迫した展開が続いていたのが第一章でした。
そして、視点が切り替わった第二章。想像していなかった物語が私の前に表れました。まさかそんなことが裏にあったなんて気づかなかったです…。
正直、違和感がなかったと言えば嘘になりますが、あまりにも違った世界で第二章は進んでいくのでした。この点にはある意味でゾッとしてしまいました。
どんでん返しというほどの強さではありませんが、予想をしていなかった展開が待ち受けていました。
オカルトチックなホラーと狂気じみたホラーの共存
本作は、比嘉姉妹シリーズの1作目となっています。ホラー小説となっているので、どのようにぼぎわんという化け物を退治するのかという点は物語の一つの焦点です。
ぼぎわんの正体が何なのか。そして、なぜ秀樹を追っかけているのか。ここにはミステリ要素もあるので、謎解きが好きという方にもおすすめです。
ぼぎわんという化け物に対峙するというオカルト的なホラーだけではなく、狂気を感じるような別の部分でもホラーも感じられる作品です。人が怖いということも肌で感じさせてくる、様々な観点での恐怖を味わえる濃厚な一冊でした。