たかひでの本棚
個性的なキャラクターたちが織り成す独特の会話。テンポの良いストーリー展開。そして、最後にひとつに繋がる伏線回収の巧みさ。伊坂幸太郎作品の魅力です。
今回はそんな伊坂作品の中でも青春要素が強い小説を紹介します。
伊坂幸太郎『砂漠』です。
入学した大学で出会った5人の男女。ボウリング、合コン、麻雀、通り魔犯との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決…。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれ成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。（「BOOKデータベース」より）
大学生の青春を舞台にした小説。楽しさの中にある葛藤を見事に描き切っているのですが、ミステリとしても一級品！
まさかのラストが最後には待ち受けていました…。
平和を願って平和（ピンフ）を揃えようとする大学生
本作の主要登場人物は主に5名。
主人公の北村。ヤマセミのような髪形をしているプレイボーイの鳥井。超能力が使えるという女性・南。無愛想ながら絶世の美女・東堂。
そして、世界平和を願う・西嶋です。この西嶋のキャラクターが突拍子もありません。笑
新歓の自己紹介で世界情勢を憂うような発言をしたり、殺処分されそうだからとシェパードを引き取ってしまったり、世界平和のために麻雀では平和（ピンフ）を揃えたり。
「その気になれば、砂漠に雪を降らせることだってできる」と豪語する西嶋の姿は、どこか憎めない上に、なぜか勇気をもらえます。
言いたいことを言えない世の中で、不満を吐いてくれるキャラクターが伊坂作品の魅力ですね。『チルドレン』の陣内はその最たる例でしょう。
【感想】奇跡を起こす大人たちの物語（伊坂幸太郎『チルドレン』）
ちなみに、本作では会話の中で陣内らしき人がちらっと登場していますよ。
巻き起こる事件の数々
この物語はただの青春小説ではありません。伊坂作品ならではのちょっとした謎があります。
「お前は大統領か？」と尋ねては、その相手を襲う通り魔。西嶋曰く、何もしない大統領に対して不満を持った男・プレジデントマンだと命名されるのですが…。果たしてその正体は？
そして、金持ちの家を狙った強盗事件。情報を聞きつけた北村たちはその場に居合わせてしまうのですが、そこでとんでもない事件が発生してしまいます…。
この先どうなるのだろうか？と気になることはもちろんですが、テンポが良いのでスラスラと読み進められますよ！
一気に回収される伏線たち
もちろん、伊坂作品の特徴である伏線回収は相変わらず凄まじいです！
先ほど紹介をした謎が一気に明らかになります。また、それだけではなく「そんなところにも伏線が張ってあったのね！」となるような驚きも満載でした。
特に小説全体にある仕掛けが施されていたのですが、これにはなかなか気付きづらい。読み返してみるとめっちゃめっちゃ上手に仕組まれていたので感服です。笑
青春小説ということもあり、様々な名言も発せられる本作。（特にラストの学長からのメッセージは素晴らしいです）
500ページ超えとボリュームはありますが、スラスラと読めて、色々な面で満足できること間違いなしですよ！
