後味の悪い作品と言われたら何を思い浮かべるでしょうか?
イヤミスと言われる小説もあるので、それが考えつく人もいることでしょう。しかし、今回はイヤミスどころではない、圧倒的に後味の悪い小説を紹介します。
歌野晶午『ハッピーエンドにさよならを』です。
夏休みのたびに私は母の実家がある田舎へ行った。新鮮な山海の料理に、いとこたちとの交流。楽しい夏の日々だ。あの部屋にさえ入らなければ…。(「死面」)理恵が合コンで出会い、付き合ったのは、容姿はよいがかなり内気な男。次第に薄気味悪い行動を取り始め、理恵は別れようとするのだが…(「殺人休暇」)。平凡な日常の向かう先が、“シアワセ”とは限らない。ミステリの偉才が紡ぎだす、小説的な企みに満ちた驚愕の結末。(「BOOKデータベース」より)
ここまでストレートにバッドエンドだと伝えている物語集もないでしょう笑。後味悪いのが好みの人は是非手に取ってほしい短編集です。
何でもかんでもバッドエンド
何度も記載していますが、本作はすべてが後味最悪なバッドエンドになります。そのため、不穏な雰囲気なんだけどどんなバッドエンドになるのかわからないのが魅力でしょう。
- 姉には優しいのに自分には厳しい親を持った少女の話
- 苦労して育てた息子が甲子園に出た親の話
- 必死に生きているホームレスの話
上記は抜粋ですが、様々な人たちのバッドエンド物語が読める作品です笑。
ストーリーの良さはピンキリ
11つの物語が収録されているのですが、質は正直ピンキリでした…。というのも、オチがバッドエンドになるので、何となく展開が読めちゃうんですよね。
しかも、無理矢理そっちに持っていくので、変なオチになってしまう感じもあったり…。
「消された15番」は正直あまり楽しめませんでした。長い割にはオチが読めて冗長に感じてしまいます。一方で、「おねえちゃん」と「尊厳、死」はかなり良かった!
どんでん返しもあるよ!
どんでん返しと書いてますが、伏線回収が上手という表現が良いかもしれません。どれがと言ってしまうとネタバレになってしまうので伏せますが、最後の最後に「おー!」となるものもあったり、良かったです。
タイトルがそういうことを指していた、表現が思っていたのと違ったなど、きちんと驚きも用意されています。この辺はさすが歌野さんだなと感じました。
短編集ですし、3ページや10ページ程度のショートショートも収録されています。気になる人は是非チェックしてほしい一冊です。ただし、気が落ちている時には読んじゃダメですよ!笑