高校生を主人公に“日常の謎”を描いた小説、『氷菓』から始まる古典部シリーズ。
シリーズ累計200万部を超える大ヒット作品です。
【感想】小説初心者でも楽しめる傑作(米澤穂信『氷菓』)作者の米澤穂信さんは、古典部シリーズ以外にも高校生に焦点を当てたシリーズを書いています。
それが小市民シリーズです。
小鳩常悟朗と小佐内ゆきの2人は、小市民的な暮らしに憧れる高校1年生。
平穏な暮らしを勝ち得るために、二人は互恵関係にあります。
そんな2人の周りで起こるちょっとした謎が本シリーズの魅力です。
今回は小市民シリーズの1作目を紹介します。
『春季限定イチゴタルト事件』です。
小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。
きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。
それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。
名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?
新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。(「BOOK」データベースより)
『氷菓』と同じように、日常の謎がベースになっています。
ただし、盗まれた小佐内さんの自転車を巡って大掛かりな展開にもなっていきます。
ポシェットはどこへいったのか?
プロローグ的な作品がポシェット紛失事件の謎。
小鳩の幼馴染、堂島に依頼をされて、クラスメイトの女子生徒のポシェットを探すことになります。
しかし、どこにも見つからず、もしかしたら盗まれたのかもしれないと考え始めます。
ネタがわかれば大したことはないですが、始まりとしては面白い物語。
小市民になろうと抗う、小鳩くんの画が印象に残るでしょう。
古典部よりも非現実的?
上で紹介した他にも2つの日常の謎が起こります。
絵を取りに来ない先輩は何を考えているのか?
堂島は器具も使わないでどうやってココアを作ったのか?
タネがわかればなるほどとなるのですが、古典部よりも「え?」となってしまうのが個人的な感想です。
ココアは面白いっちゃ面白いけど…。というのが本音でした。笑
彼らはなぜ小市民を目指すのか?
小市民シリーズの魅力は、小市民を目指す2人の過去や行動にある気がしています。
彼らはなぜ小市民になりたいのか?
影をひそめようとする小佐内さんですが、徐々に本性が現れます。
これがまあ怖いんです。笑
小鳩くんに関しても、小市民になろうとするけど、本当になりたいのかと悩む葛藤が垣間見えます。
謎を解きながら、徐々にわかってくる2人の人間性と、それが明らかになった上で進んでいく物語展開は素晴らしかったです。
古典部と同様、ライトに読める作品なので、初心者でもすんなり読めるはず。
古典部が気に入った人は、ぜひ手にとってほしいなと思います。