どんでん返しが素晴らしい作品と言えば何が思い浮かぶでしょうか?クローズドサークルでのミステリと限定すれば、綾辻行人さんの『十角館の殺人』は有名ですね。
ある一行で世界が変わるどんでん返しが素晴らしいミステリでした。
【感想】たった1行で世界がひっくり返る(綾辻行人『十角館の殺人』)今回はその綾辻さんが絶賛した新しいミステリ小説を紹介します。「こんなアイデアがあったのか」と評価した、素晴らしいクローズドサークル作品。
市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』です。
特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船“ジェリーフィッシュ”。その発明者であるファイファー教授を中心とした技術開発メンバー六人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいた。ところが航行試験中に、閉鎖状況の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに、自動航行システムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が…。二十一世紀の『そして誰もいなくなった』登場!選考委員絶賛、精緻に描かれた本格ミステリ。
このような小説にはなかなか出会えていなかったのですが、久しぶりにびっくりさせられました。
雪山に不時着した6人の男女
航空機の歴史を変えた発明品。ジェリーフィッシュと呼ばれる小型飛行船です。ジェリーフィッシュの最終試験としてテスト飛行に臨んだ6人の開発メンバー。
しかし、残念ながらジェリーフィッシュは雪山に不時着してしまいます…。
救助が来るまでの間、凌ごうとする6人でしたが、そのうちの1人が毒殺されてしまいます。メンバーの中に殺人犯が混じっているのか?
疑心暗鬼になる開発メンバーたち。その後も1人ずつ殺されていき…。
事故から数日経った現場では…
不時着事故から2週間経った地上では、警察が事故の調査に乗り出していました。
事故に遭遇した6人は全員死亡。世紀の発明品、ジェリーフィッシュの事故はそれだけでもインパクトは充分でした。
しかし、なんとこの6人は他殺だと判明したのです。
全員が他殺だとしたら、誰が犯人なのか?
そして、なぜ他殺だとわかるようにして殺人に及んだのか?
事故だけではなく、殺人事件の捜査も始まるのでした。
色んなトリックの合わせ技!
本作は3つの視点で物語が進んでいきます。
1つは事故に遭遇したジェリーフィッシュの様子。もう1つは事故の捜査をする警察の様子。
そして、犯人が過去の回想をするシーンです。もちろん、この時に犯人が誰かは明かされていません。
徐々に犯人の動機がわかると同時に、誰が犯人なのかもわかる仕掛けになっています。金田一のプロローグにも似た見せ方だなと感じました。
そして、肝心のトリックについて。『十角館の殺人』や『そして誰もいなくなった』などの名作はもちろん、他のミステリ作品もうまく使ったトリックでした。
過去のミステリ作品を上手に活用していています。トリックの合わせ技はお見事でした!
どんでん返しだけではなく、犯人当てミステリとしても楽しめる本作。
綾辻作品が好きな人にはもちろんですが、個人的には金田一が好きという人にも読んでもらいたいと思いました!