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【感想】殺人犯は誰の人格?設定をフルに使った本格ミステリ(西澤保彦『人格転移の殺人』)

独自のSF設定に定評のある作家、西澤保彦さん。

森博嗣さんが「スパ・ナチュラ・シリーズ」と名付けた作品群があります。

『七回死んだ男』がそれです。

九回同じ日を繰り返す高校生。

そのループ内で起こる殺人事件を防ごうとする物語です。

【感想】時間ミステリならではの驚き!同じ日を九回繰り返す特異体質(西澤保彦『七回死んだ男』)

独自の設定の中で、論理的に進められる推理。

新本格ミステリとして、素晴らしい作品でした。

ちなみに米澤穂信さんの『折れた竜骨』も設定の中で進められるミステリです。

折れた竜骨-米澤穂信【感想】驚きの連続!SFミステリの最高峰(米澤穂信『折れた竜骨』)

今回も「スパ・ナチュラ・シリーズ」の小説を紹介します。

西澤保彦『人格転移の殺人』です。

突然の大地震で、ファーストフード店にいた6人が逃げ込んだ先は、人格を入れ替える実験施設だった。法則に沿って6人の人格が入れ替わり、脱出不能の隔絶された空間で連続殺人事件が起こる。

犯人は誰の人格で、凶行の目的は何なのか?人格と論理が輪舞する奇想天外西沢マジック。寝不足覚悟の面白さ。(「BOOK」データベースより)

今回も独特の設定のもと進められる推理。

ラストに明かされるトリックが凄まじかったです。

人格が入れ替わってしまうシェルター

アメリカを訪れていた日本人の苫江利夫(とまえりお)。

たまたま入ったハンバーガーショップにいた時に大地震に遭遇してしまいます。

店員を含めた7人は、なぜかお店に存在していたシェルターに逃げ込みます。

目が覚めると江利夫は、店にいた客の体になっていました。

江利夫以外のメンバーも体と人格が入れ替わっている。

シェルターの正体は、入り込んだ人の人格をそれぞれ入れ替えてしまうものだったのです。

しかも、逃げ遅れた日本人女性がシェルターの外で死んでいて、首を絞められた跡も…。

読み進めるのが大変!ややこしい!

このような設定で話が進んでいくので、とにかくややこしい!

一度ならまだしも、人格入れ替えが何度も起こります。

また、登場人物の説明もわかりづらいです。

例:“ランディ”(=僕)

“”が外見()が人格を表しています。

このような記載ばかりなので、読んでてとにかくややこしかったです。笑

読み進めるのがなかなかに大変な物語でした。

また、人格の入れ替わりと言えば、大ヒット映画「君の名は。」があります。

しかし、本作はテイストが全然違います。こちらはかなり凄惨な作品です。

その点は注意して手に取ってください。笑

オチが秀逸

『七回死んだ男』でもそうでしたが、本作も最後のオチは素晴らしかったです。

タイトルの通り、殺人事件が起こります。その犯人は誰なのか?が大きな謎です。

ただ、本作は人格転移が起こっている上で起こります。

誰が殺したのかだけではなく、誰の人格が殺したのか?が最も重要になっています。

最後に明かされる真実が秀逸すぎました。

何となく想像していた部分もありましたが、ここまでこんがらがっていると、完璧には無理でした。笑

新本格ミステリが好きな人にはぜひ読んでもらいたい作品です!