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【感想】いつまでも作品の中にいたい!ピアノの天才たちが織り成す演奏会(恩田陸『蜜蜂と遠雷』)

生きていれば感じるちょっとした葛藤。自分が思い描いた理想はなかなか叶いづらい。

「もっと高みにいけると思っていた…」

「自分はどうして天才ではないのか…」

「どうしてなりたい姿にはなれなかったのか…」

このように感じたことはないでしょうか?

今回は、天才たちの悩みや葛藤を描いた作品を紹介したいと思います。

恩田陸『蜜蜂と遠雷』です。


3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵15歳。かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?

2017年に本屋大賞と直木賞のW受賞を果たして本作。その名に恥じないとても素晴らしい青春小説でした。

コンクールに挑む4人のピアニスト

本作はピアノコンクールが舞台になっており、主に4人の人物に焦点が当たって物語は進んでいきます。

天才少女と呼ばれながらも14歳でピアノから離れた、栄伝亜夜。

企業に勤めながらコンクールに挑戦する、高島明石。

名門音楽院の王子様、マサル・カルロス。

そして音楽の神様に愛された少年、松田塵。

それぞれにピアノコンクールへ参加する理由があるのですが、彼らが抱える葛藤や思いがキレイに描かれていました。

こと細かに描かれている心理描写

先ほども記載した通り、本作では4人が抱える気持ちが丁寧に描かれています。

例えば、母の死が原因でピアノから離れてしまった亜夜。彼女がピアノに戻ってくるまでの葛藤やピアノコンクールに挑む姿にはグッとくるものがありました。

天才と呼ばれているからこその「悩みや苦しみ」。そんな天才たちが、他の天才の演奏を通じて成長していく姿はとても心地良かったです。

また、天才たちとの対比として描かれているのが高島明石です。彼は天才タイプではなく、才能に恵まれずにピアノのプロを諦めていました。

そんな彼がコンクールを通じて何を得たのか?

天才ではないからこその気持ちには共感できることがありました。

そして、とんでもない化け物ピアニストとして登場する松田塵。彼はとにかく天真爛漫な天才です。彼のピアノシーンにも注目ですよ!

いつまでもこの世界にいたい!

『夜のピクニック』でもそうでしたが、久しぶりに「もっと彼らのいる世界を体験したい!」と思わされました。

夜のピクニック【感想】読み終わるのが惜しい青春小説(恩田陸『夜のピクニック』)

上下巻の作品ですが、あっという間。もっと読んでいたいとさえ思いました。きっと皆さんもそのように感じるでしょう。

彼らがこれから成長していく姿。ピアニストとしてたくさんの人を感動させる未来を一緒に見てみたいとなりますよ。