読者を間違った認識へと誘導するのが得意な作家、道尾秀介さん。
物語の世界に吸い寄せられることはもちろんですが、その中で展開される読者を騙す仕掛けはとても素晴らしいです。
今回は思い込みの心理と盲点をついてきた、どんでん返しがすごい作品を紹介します。
道尾秀介『片眼の猿』です。
盗聴専門の探偵、それが俺の職業だ。目下の仕事は産業スパイを洗い出すこと。楽器メーカーからの依頼でライバル社の調査を続けるうちに、冬絵の存在を知った。同業者だった彼女をスカウトし、チームプレイで核心に迫ろうとしていた矢先に殺人事件が起きる。俺たちは否応なしに、その渦中に巻き込まれていった。謎、そして…。ソウルと技巧が絶妙なハーモニーを奏でる長編ミステリ。(「BOOKデータベース」より)
最後の最後で明かされるネタバラシは今作も秀逸でした…。
盗聴を武器とする探偵
盗聴専門の探偵・三梨幸一郎。彼は楽器メーカーの依頼でライバル社の調査をすることになった。
その途中、三梨はある女性・冬絵と接触する。彼女にはある特殊能力があり、今回の調査に必要な戦力だった。
ある日、三梨がライバル会社の盗聴をしていると事件が。ライバル会社の社長が何者かに殺害されてしまった。殺害の前、電話をしていた社長。どうやら「タバタ」という女性が犯人のようなのだが…。
殺人事件を中心に様々な謎が
殺人事件の犯人は誰なのか? 何のための殺人なのか?
このようなミステリ的な謎はもちろんですが、他にも気になる点が多くあります。
三梨の過去シーンに登場する秋絵という人物。ある事件がきっかけで自殺をしてしまったのですが、これにはあることが関連していました。
謎解きに至るまでの過程がテンポよく描かれているのでスラスラ読めます。そして、その中に巧妙に伏線が仕掛けられているのです。
最後の伏線回収が圧巻!
本作のラストにはとんでもない伏線回収が待っています。作品冒頭からある違和感はあったのですが、その正体は最後の最後にとんでもない驚きと共に明かされます。
殺人事件の真相、秋絵の死の真相。これらだけではありません。
「そんなことになってたの?」となってしまう驚きの事実がたくさん明らかになります。
何かがおかしいと思いながら読み進めていましたが、これには気づかず…。というか絶対にわからないですね。笑
でも読み返すと上手にトリックが仕掛けられている。
『カラスの親指』同様に、爽快に騙されたいという人にオススメの小説ですよ!