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【感想】伏線回収がすごい!すべてが1本に繋がる極上ミステリ(辻堂ゆめ『君の想い出をください、と天使は言った』)

第13回『このミステリーがすごい!』大賞で優秀作を受賞し、デビューした辻堂ゆめさん。

誰も自分を認識してくれない世界を題材にした作品、『いなくなった私へ』。

【感想】驚愕のラスト!自分が認識されない理由とは?(辻堂ゆめ『いなくなった私へ』)

自分が死ぬ予知夢を見てしまった男の話、『今、死ぬ夢を見ましたか』。

【感想】衝撃のどんでん返し!自分が死ぬ将来は変えられるのか?(辻堂ゆめ『今、死ぬ夢を見ましたか』)

不思議な設定で展開される作品が魅力的で、序盤から張り巡らされた伏線が最後にはすべて回収されます。爽快な読後感を味わいたい人にオススメの小説家です。

今回は8月23日に発売されたばかりの新作を紹介します。

『君の想い出をください、と天使は言った』です。

河野夕夏は絶望していた。急性の脳腫瘍で倒れて入院し、医師の態度から最悪の結果を察してしまったのだ。その夜、ひとりで泣いていると、目の前に真っ黒な服をまとった不思議な青年が現れる。彼は自らを“悪魔”と名乗り、夕夏に取引を持ちかける。目覚めると、夕夏の腫瘍は良性に変わっていた。しかし彼女はここ2年間の記憶を失っていて―「私の大切なものって、何だろう…?」涙溢れる、ミステリアス・ラブストーリー。(「BOOKデータベース」より)

今作も悪魔との取引を描いた不思議な物語です。

命の代償として記憶を失った女性

銀行で働く25歳の河野夕夏。彼女はある日、職場で倒れてしまう。原因は脳腫瘍でどうやら悪性のようだった。絶望する彼女の前に“悪魔”を名乗る青年が現れる。

彼は夕夏にある取引を持ち掛ける。内容は、夕夏の命を助ける代わりに、彼女の最も大切なものを1つ奪うというもの。

取引に応じた夕夏。翌朝、目が覚めると脳腫瘍は良性になっていた。しかし、彼女は入院前2年間の記憶を失っていたのだった。夕夏の大切なものとは一体何だったのか?

読み進むにつれて深まる謎

  • どうして夕夏は記憶を失ったのか?
  • 大事なものとは何だったのか?

これらが本作の大きな謎になっています。しかし、記憶というテーマだからこそ、様々なことが怪しく感じられます。

星羅という名前の双子の妹の存在。“悪魔”はなぜ自分と取引をしたのか。記憶がない間に付き合っていた様子の同期。なぜか自分を怖がっている後輩。

読み手も夕夏と同じように2年前の情報は持っていません。彼女が不思議に感じていることを自分たちも考えながら読み進められるのです。

最後の最後まで仕掛けられたネタ

謎を推理しながら読んでいると、“悪魔”の正体大事なものを奪われた理由など、何となくオチや伏線が読める部分もありました。

しかし、完璧に当てるのは難しかった…。というよりも下手にちょっと予想が当たっている分、想像以上のタネが明かされた時のインパクトが強いです。

「そんなところの情報と繋がるなんて…」「そこにも伏線があったのか…」

後半の伏線回収ではこのような気持ちになりまくりでした。記憶の欠落というテーマを存分に使った伏線の張り方はお見事。読んだ人と感想を言い合いたいです。笑

また、今までの辻堂さんにしては、珍しいオチのつけ方ように感じました。過去作ではヘビーな印象が強かったのですが、今回はちょっとテイストが違いました。

新しい作風を体験できるので、辻堂ファンは絶対に読んでくださいね!

↓過去作の感想はこちら

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