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【感想】短編集に迷ったらこれ!6つの奇妙な物語集(道尾秀介『鬼の跫音』)

あなたは短編集を読むことは多いですか?

1話が短いことから、ちょっとした時間でも読めるのがメリットですね。一方で、すべての短編が面白い小説というのはなかなかありません。

そこで今回は、すべての短編が面白い1冊を取り上げます。私が最もオススメする短編集を紹介します。

道尾秀介『鬼の跫音』です。

刑務所で作られた椅子に奇妙な文章が彫られていた。家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語は哀しい事件の真相を示しており…(「⺨(ケモノ)」)。同級生のひどい攻撃に怯えて毎日を送る僕は、ある女の人と出会う。彼女が持つ、何でも中に入れられる不思議なキャンバス。僕はその中に恐怖心を取って欲しいと頼むが…(「悪意の顔」)。心の「鬼」に捕らわれた男女が迎える予想外の終局とは。驚愕必至の衝撃作。(「BOOK」データベースより)

どれもこれも意味がわかると怖い話のような、ゾッとするようなラストが用意されていました。

鈴虫

私のもとを訪れた刑事。十一年前に埋めた親友・「S」の死体が発見されたのだった。Sとは、現在の妻・杏子を巡ってちょっとした因縁があった。私はその時に起こった出来事を回想する…。

1人の女性を巡って起きた悲劇。主人公の私、S、杏子は大学時代の友人だった。杏子に恋心を抱く私。Sは杏子と恋仲にあったが、別の女性と浮気を繰り返していた。

Sに対して憎悪を抱く私。ある日、事件が起こる…。

夏目漱石の『こころ』に似たような雰囲気をまとった作品。ラストの暗喩がとても良い読後感を与えてくれます。

⺨(ケモノ)

刑務所で作られた椅子に奇妙な文章が彫られていた。家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語は哀しい事件の真相を示しており…。

個人的には6つの中で1番好きな物語です。

家族から見放された人生を歩んでいる、主人公の僕。ある日、椅子に彫られた謎の文字を発見する。

父は屍 母は大 わが妹よ 後悔はない

調べてみるとどうやらある死刑囚が刻んだものだと判明。家族を惨殺した「S」という男の遺したメッセージだった。どんな意味が隠されているのか? 僕は調査を始めるのだが…。

この物語は最後まで気を抜かずに読んでください。

ラストが凄すぎます…。マジで。(語彙力)

また、これが好きな人は米澤穂信さんの『儚い羊たちの祝宴』も気に入るはずです。

【感想】どんでん返し好きなら読んでおきたい一冊(米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』)

よいぎつね

20年振りに地元に戻ってきた雑誌記者の私。地域の伝統芸能「よい狐」の取材を任されたのだった。少しでも滞在時間を短くしたい私。そこには過去に犯した過ちが関連していた…。

学生時代に悪友たちと度胸試しに興じていた私。ある日、仲間の「S」から命じられたのは、闇夜に乗じて女性を襲うことだった。実行には後ろ向きの私だったが…。

この物語もラストが強烈でした。これこそ意味が分かると怖い話ですね。

ミステリと怪談がキレイに織り交ざって展開されています。考えれば考えるほどドツボにハマってしまうでしょう。

箱詰めの文字

ある日、貯金箱を盗んだことを謝罪しにやってきた青年。しかし、小説家の僕には身に覚えのない代物だった。中身を開けると紙切れが1枚。「残念だ」という3文字だった。これには、どうやら友人だった「S」が絡んでいるようで…。

驚きに次ぐ驚きの本作。たった30ページなのに、数度のどんでん返しが起こります。

主人公の家に貯金箱を置いたのは誰か?

記された「残念だ」の意味とは?

こうした小さな謎が、最後は1本につながる華麗な伏線回収の連続は、読んでいて心地よいはずです。

冬の鬼

「S」と一緒に暮らす女性の物語。1月1日~8日までの日記形式で物語は語られます。

ある女性が日記形式で進む本作。1月1日~8日までの出来事が記されています。しかし、物語は8日から順に遡っていく形式で進んでいきます。洋画「メメント」のようなテイストですね。

ラスト(物語では冒頭)で彼女は何に怯えていたのか?

読み返すと全く異なる印象を受けます。これも意味怖に似た話ですね。

悪意の顔

同級生の「S」からひどい攻撃に怯えて毎日を送る僕は、ある女の人と出会う。彼女が持つ、何でも中に入れられる不思議なキャンバス。僕はその中に恐怖心を取って欲しいと頼むが…。

これは「世にも奇妙な物語」にありそうな話だなと思いました。何でも中に入れられる不思議なキャンパスを持つ女性。家族は中に入ってしまい、自身は感情を無くしてしまったそう。

キャンパスは本物なのか?

ここに焦点が当たる物語です。しかし、最後にはものすごい角度から事実が浮かび上がってきました。笑

まとめ

6つの短編をそれぞれ紹介してきました。どれもこれもインパクト大な物語ばかり。

短いからと侮るなかれ。どれを読んでもゾッとするラストがあなたを待ち受けていますよ!