読む前と後で文章に対して抱く印象が変わる小説は数あれど、表紙を見て印象が変わることは珍しいと思います。
今回はそんな珍しい小説を紹介します。
樋口有介『ピース』です。
埼玉県北西部の田舎町。元警察官のマスターと寡黙な青年が切り盛りするスナック「ラザロ」の周辺で、ひと月に二度もバラバラ殺人事件が発生した。被害者は歯科医とラザロの女性ピアニストだと判明するが、捜査は難航し、三人目の犠牲者が。県警ベテラン刑事は被害者の右手にある特徴を発見するが…。(「BOOKデータベース」より)
ピースサインをしている4人の子どもが写っている表紙。仲睦まじい様子が描かれているように思っていました。
しかし、残念ながら読後にはそんな印象を持てなくなってしまいます…。
連続殺人の謎を追うミステリ
表紙から青春小説のようなものをイメージしていましたが、全然違いました。あらすじにも書かれているので、そこに対しての抵抗はありませんが。
舞台は埼玉県。そこで連続して起こるバラバラ殺人事件の謎に刑事が挑むという物語です。被害者にわかりやすい共通点はないものの、どう考えても同一人物の犯行。
犯人の動機は?
そして、被害者の共通点は何なのか?
これらの謎に徐々に迫っていくという物語です。
表紙とどう繋がるの?と思っていたら…
そもそも、本書を手にしたきっかけは本屋のPOPでした。「読んでから表紙を見ると、恐怖します」みたいな内容だった気がします。笑
途中までは全然表紙につながる糸すらなく、どんな感じで恐怖になるのかなーと思っていました。そして、あるタイミングで表紙の内容に繋がるのですが、これがまあスゴイ!
先ほどまで特に何も感じずに見ていた表紙に、怖さを覚えました。
読む前と後では、表紙の持つ意味が全然違う。ネタバレなく、彼らに言葉をかけるなら「おい!」がいいですかね。笑
表紙の意味がピーク
個人的には、本作の見どころは表紙の意味が変わる瞬間だと思っています。そこから先に犯人が誰なのか?などの要素もあるにはありますが、なかなか先の瞬間を超えるシーンに出会うことはできず…。
ミステリとしての謎解きや伏線回収を求めすぎると、物足りなさを感じてしまうかもしれません。私はその一人でした。
表紙の意味が変わるという体験はなかなかできませんので、その点に興味を持った方は手にとってもらいたいなと思います。ただし、あまりどんでん返しや伏線回収は、期待しすぎない方が良いです。