記事内ではアフィリエイトURLを使用しています

【感想】一行目に犯人の名前が書かれている短編ミステリ集(麻耶雄嵩『さよなら神様』)

奇抜なラストに定評のある作家、麻耶雄嵩さん。

何度かとんでもないどんでん返しが起こる小説を紹介してきました。

【感想】小説好きが絶対に騙される一冊(麻耶雄嵩『蛍』)

何もかもを知っている自称神様が登場する作品、『神様ゲーム』。

【感想】神様の言うことは絶対!問題だらけの児童書(麻耶雄嵩『神様ゲーム』)

児童書とは思えない作品展開と、「?」だらけになるラストで話題になりました。

今回は神様シリーズの2作品目を紹介します。

麻耶雄嵩『さよなら神様』です。

「犯人は○○だよ」。クラスメイトの鈴木太郎の情報は絶対に正しい。やつは神様なのだから。神様の残酷なご託宣を覆すべく、久遠小探偵団は事件の捜査に乗り出すが…。衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させ、本格ミステリ大賞に輝いた超話題作。他の追随を許さぬ超絶推理の頂点がここに!第15回本格ミステリ大賞受賞。(「BOOK」データベースより)

本作は連作短編集になっており、1話完結の作品が6つ収録されています。

独立した物語ではないので、読み進めるごとに新たな真実が垣間見えてきて面白いです。

すべて、「犯人は〇〇だよ」という神様の言葉から始まります。

そのため、倒叙ミステリになっているのですが、麻耶雄嵩さんがそんなありきたりのことをするわけはありません。笑

少年探偵団と神様

主人公は久遠小学校に通う桑町淳。

クラスメイトで自称神様の鈴木太郎に、ある事件の犯人を尋ねます。

それは、久遠小の美旗先生が容疑者として捜査されている殺人事件。

神様の口から出てきた犯人の名前は、どうやらクラスメイトの父親らしい。

しかし、どう考えても被害者との接点がない。

本当に神様は正しい名前を告げているのか?

作品構成上、犯人は何のために被害者を殺したのか?を考える物語です。

麻耶雄嵩さんらしい、論理的にそうなる理由がしっかりと書かれていました。

もちろん、真っ当な内容ではありませんでしたが。笑

神様という設定を強固にするための物語だと考えた方が良いでしょう。

個人的にはこういったふざけた感じは嫌いではないですが。笑

アリバイくずし

上津里子という女性が自宅で絞殺された。

桑町はこの事件の犯人を神様に尋ねた。

それは、里子と一緒に殺された、犬のきな粉殺しの犯人を知りたいからだった。

口から出てきた名前はまたしてもクラスメイトの親。

しかも、犯人には完璧なアリバイがあった。今回の指摘も正しいのだろうか?

先ほども説明の通り、犯人がわかっている以上、そこからの逆算をしないといけません。笑

アリバイトリックはどのように崩されるのか?

ワクワクして読んでましたが、これもとんでもない展開でした。

本当に好き嫌いわかれる作風だなと改めて感じました。

ダムからの遠い道

町で起こった殺人事件。

桑町が神様に犯人を尋ねると、「少年探偵団と神様」で容疑者とされていた美旗先生だと宣いました。

今回の事件の場合、先生には完璧なアリバイが存在していました。

美旗先生はどのようにして犯行に及んだのでしょうか?

こちらも、これまたスゴイ展開が待ってました。

一筋縄ではいかない理由がしっかりと提示されているので面白いです。

まあ納得できるかできないかは別ですが。笑

バレンタイン昔語り

去年のバレンタインに死んだクラスメイト、川合を殺した犯人を尋ねた桑町。

神様が宣った名前は聞いたこともない人物だった。

そして、事故死と思われていた川合の死は、殺人だったことが判明した。

誰が何のために川合を殺害したのか?

桑町は独自に犯人を捜し始めます。

個人的にはこの話が一番好きです。

前の3作品が合わなくてもここまでは読んでほしい!

なぜなら、この物語には驚きポイントが2つあるからです。

1つ目は前の3作品で何となく持っていた違和感が明らかになるシーン。

種明かしも上手だし、中盤で明かして良いの?とも思いましたが、大したことなかったみたいです。笑

また、この物語のメイントリックは素晴らしすぎました。

今までの設定をうまいこと使って読者を騙してくれます。

というより、桑町すら騙しているからスゴイ。

衝撃度は他の小説と比較してもかなり上位です。

比土との対決

クラスのマドンナ、小夜子が殺害された。

神様曰く、犯人はクラスメイトの比土らしい。

桑町は犯行トリックを考えますが、比土にはどうやらアリバイがある。

小夜子をどのように殺したのだろうか?

普通のミステリではできない手法で展開されるネタは本当にお見事!

神様がいるからできるトリックだなと感じました。

あとラストがちょっとやるせない。

麻耶作品ならではの終わらせ方でした。

さよなら、神様

本作最後の物語。

この物語はあらすじがネタバレになってしまうので省きますが、神様が指摘した犯人の名前は桑町でした…。

謎としてはそこまで難しくないというか、これまでに比べると驚きは少ないでしょう。

しかし、今までのまとめとして、しっかりと伏線を回収しているので、心地よく読めます。

ただ、物語全体とのラストなる最後が個人的には「え?」となりました。

ただでさえ好き嫌いが別れそうな本作で、より好みが異なりそうだなと思いました。

(私はあまり好きではないかも笑)

「バレンタイン昔語り」をとりあえず読んでください。笑

これだけでも麻耶雄嵩のすごさがわかる気がしてます。