あらすじも含めてネタバレは厳禁。そんな触れ込みで、2017年に大きな話題となった作品がありました。
今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』です。この作品は、のちにシリーズ化されており、現在までに3作品が刊行されています。また、実写映画化もされています。
今回は『屍人荘の殺人』から始まるシリーズの、紹介と全作品の魅力をネタバレなしで紹介していきます。刊行された順(読むべき順番)に紹介しますので、この順番で読んでみてください。
『屍人荘の殺人』シリーズとは?
まずは『屍人荘の殺人』シリーズについて、簡単に紹介していきます。
このシリーズの主な登場人物は、ある不思議な体質を持っている探偵少女の剣崎比留子。そして、大学のミステリ愛好会の明智恭介と葉村譲です。
彼らを中心として物語は進行していきます。キャラクターも個性的なので、シリーズものにはもってこいの人物たちです。
なお、タイトルにもある通り、殺人事件を扱ったミステリ作品となっています。ただし、本作はよくあるミステリ小説とはひと味違った設定があります。
それは、通常ではありえない状況下でのミステリを描いているという点です。いわゆる特殊設定ミステリです。
【特殊設定ミステリ15選】絶対に読むべきおすすめの小説を紹介この特殊設定が抜群に素晴らしいのが『屍人荘の殺人』シリーズの魅力です。
作品ならではの設定を用いているので、犯人特定に至るまでの論理的なアプローチが圧巻で、爽快な気持ちよさを味わえる作品となっています。
シリーズを順番に紹介
それでは、作品の紹介を順番にしていきたいと思います。
新しい作品から読んでしまうと、前作のネタバレを食らう可能性があります。刊行順に読むことをおすすめします。
1作目:『屍人荘の殺人』
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け―。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった…!!究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!奇想と本格ミステリが見事に融合する選考委員大絶賛の第27回鮎川哲也賞受賞作!(「BOOKデータベース」より)
シリーズの1作目。ミステリ愛好会の明智と葉村、そして探偵少女の剣崎比留子は、映画研究部の夏合宿に加わることになりました。合宿の場所は、紫湛荘という名のペンション。そこで、想像できないことが起こり、彼らは立てこもりをせざるを得なくなるのでした…。
そんな極限状態のペンションで連続殺人が起こってしまいます。外に出れない。しかし、ペンションにいる誰かが殺人をしている。あまりにも絶望的な状況で、比留子たちは犯人探しを始めるのでした。
ネタバレになってしまうので、明言は避けますが、特殊設定を活用した素晴らしいミステリになっていました。犯人当ての論理性やトリックの納得感など、それまでに用意されている素材をうまく使っていて、ビックリさせられました。
シリーズ1作目にふさわしい展開もあり、ミステリの出来栄えだけでなく、キャラクターに惚れ込んでしまう作品です。
2作目:『魔眼の匣の殺人』
その日、神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子を含む9人が、人里離れた班目機関の元研究施設“魔眼の匣”を訪れた。その主であり、予言者として恐れられている老女は、来訪者に「あと二日のうちに、この地で4人死ぬ」と告げた。施設と外界を結ぶ唯一の橋が燃え落ちた後、予言が成就するがごとく一人が死に、閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。さらに客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白し――。ミステリ界を席捲した『屍人荘の殺人』シリーズ第2弾。
未来を予知できる・サキミ様という存在がいる人里離れた施設が舞台。サキミ様の予言は絶対に外れない特別なものなのでした。そんな彼女は「あと二日のうちに、四人が死ぬ」という予言をします。
その時、施設にいたのは九人。まさかそんなことがあるわけないと思っていたのもつかの間、施設は外界から隔離された状態になるのでした。そして一人目の犠牲者が出てしまう。予言の通りにあと三人が死んでしまうのか…?
そんな時、来客者のうちの一人の女子高生が名乗りを上げます。彼女もサキミ様のように、未来を予知する能力を持っていたのでした。
予言の通りに人が死んでいくという一風変わった状況を題材にしたミステリです。本作でも、論理的な解決パートは健在。よく練られている真相が、あなたを待っています。
そして、解決後にもちょっとしたひと捻りがあるのも本作の魅力です。思わず唸ってしまった展開をぜひ楽しんでみてください。
3作目:『兇人邸の殺人』
『魔眼の匣の殺人』から数ヶ月後――。神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子が突然の依頼で連れて行かれた先は、“生ける廃墟”として人気を博す地方テーマパークだった。園内にそびえる異様な建物「兇人邸」に、比留子たちが追う班目機関の研究成果が隠されているという。深夜、依頼主たちとともに兇人邸に潜入した二人を、“異形の存在”による無慈悲な殺戮が待ち受けていた。
廃墟にそびえるテーマパークの中から脱出ができなくなってしまった。原因は、この世のものとは思えない殺人鬼の存在でした。抗えない者への恐怖を感じる、ある種ホラーのような雰囲気もある作品でした。読んでいてドキドキするシーンが多々あります。
また、閉鎖空間から身動きができない状態で、人間による殺人事件も発生してしまいます。極限状態の中で、なぜ殺人を実行したのか。犯人の正体と目的。そして、どのように犯行を行ったのか。
特殊設定を活かした本格的なミステリを堪能できる作品です。
また、個人的には、過去2作よりも衝撃度は高いと感じました。なんとなく予想していた部分はありましたが、それを遥かに超える真実が最後に姿を表します。まさかこんなことになっていたとは…。こうした感想を抱くこと間違いなしです。