パズラーという言葉をご存じでしょうか?
謎解きの論理性を重視しているミステリー小説のことを指す言葉です。謎の論理的な解決に注目がされる作品なので、当たり前ですが、推理の整合性や納得感がものを言うジャンルです。
そんなジャンルの中で、数多くの面白い作品を書いている作家がいます。白井智之さんです。エログロ系の作品が多く、苦手な人は絶対に避けた方が良いレベルの描写が数多く出てきます。
ただ、グロい作品に抵抗がないというミステリ好きなら、読まないのはもったいないです!
今回は、白井智之さんのおすすめ小説を5つ紹介していきたいと思います。ネタバレなしでそれぞれ簡単に紹介しますので、気になる作品があれば、ぜひ手に取ってみてください!
1.『エレファントヘッド』
精神科医の象山は家族を愛している。だが彼は知っていた。どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことを――。やがて謎の薬を手に入れたことで、彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。謎もトリックも展開もすべてネタバレ禁止!前代未聞のストーリー、尋常ならざる伏線の数々。多重解決ミステリの極限!
正直、この作品を紹介したいがために、この記事を書いたと言っても過言ではありません。とにかくスゴイ作品でした。
あらすじ紹介やないようについて触れることをしたくなく、こればかりはとにかく早く読んでほしいというお伝えしかできないです…。
サラッと、あらすじを簡単に説明します。主人公は精神科医の象山。彼は家族と幸せな生活を送っていますが、彼らの身にある事件が起こってしまいます…。このくらいしかお伝えできません。
本書のスゴイところは、とにかく多重解決が止まらないという点です。後述する『名探偵のいけにえ』にも通ずるところがありますが「頭の中どうなっているんですか…?」となってしまうほどの、論理展開と衝撃の嵐でした。
改めて言いますが、ミステリ好きは今すぐに読んでください。ネタバレ踏む前に早く読んでください!
2.『名探偵のいけにえ: 人民教会殺人事件』
病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る、奇蹟の楽園ジョーデンタウン。調査に赴いたまま戻らない助手を心配して教団の本拠地に乗り込んだ探偵・大塒は、次々と不審な死に遭遇する。奇蹟を信じる人々に、現実世界のロジックは通用するのか?圧巻の解決編一五〇ページ!特殊条件、多重解決推理の最前線!
2022年に多くのミステリ好きを唸らせた作品と言っても過言ではないでしょう。多重解決ミステリの真骨頂ともいえる、とんでもない完成度のミステリ小説でした。
奇蹟があると信じている人たちの村にやってきた探偵たち。そこで殺人事件が起きてしまいます。犯人とそのトリックを推理する作品なんですが、物語の3割以上を解決パートが占めています。
たくさんの多重解決が本作では行われているのです(重複表現になってますがそれくらいたくさんのひっくり返しがありました…)。というのも、本作では2種類の解決を提示しないといけない設定だからです。
この作品では奇蹟を信じている人間と信じていない人間がいて、それぞれに事件の真相を明かさないといけないからです。
奇蹟を信じている人には、奇跡を踏まえた上での事件の真相。信じていない人には、現実的な事件の真相。それぞれに矛盾なく、論理的な推理が行われるのは素晴らし過ぎました。
読み終えた時にはドッと疲労感が押し寄せてくるかもしれません。それくらい、たくさんの情報量が頭の中に流れ込んできました。この作品を書き上げた白井先生は神だと思います…。
3.『名探偵のはらわた』
昭和史に残る極悪犯罪者たちが地獄の淵からよみがえり、現代日本で殺戮の限りを尽くす。空前絶後の惨劇に立ち上がった伝説の名探偵は、推理の力でこの悪夢を止められるのか? 「疑え――そして真実を見抜け」二度読み必至の鮮やかな伏線回収、緻密なロジックによる美しき多重解決。本格ミステリの神髄、ここにあり。
昭和の極悪犯罪者たちが蘇ってしまった。そんな中、犯罪者たちが生前に起こしていた事件を彷彿とさせるような事件が起こることになってしまった。犯罪者たちを止めるべく、名探偵は推理をしていくが…。
『名探偵のいけにえ』の兄弟作?姉妹作?となっている作品。厳密なシリーズものではないですが、立ち位置は似ている感じです。
連作短編集のようになっており、それぞれで話が完結するようにはなっています。犯罪者たちの行動に制限があるという、特殊設定が敷かれており、解決パートではこの点を踏まえた上での推理が披露されます。
他の人の感想を見ていると「グロい描写は控えめ」とありました。たしかに、白井智之作品の中では控えめです。ただ、一般的に見ると、ところどころでグロい描写はあるので、注意して読んでください。
4.『お前の彼女は二階で茹で死に』
自殺した妹・リチウム(ミミズ人間)の仇を討つために、刑事になったヒコボシ。事件を追いながら、リチウムを自殺に追い込んだ連中の尻尾を摑み、破滅させてやろうとたくらむ。事件の謎を解くのは、天才的な推理力を持つ女子高生探偵・マホマホ。しかし、彼女はヒコボシに監禁されていて……。文庫化に際し大幅改稿、著者渾身の本格ミステリ大作!
4つの物語が収録されている連作短編集。刑事のヒコボシと彼が監禁をしている女子高生のマホマホの二人で、事件を解決していくという作品です。
本作の登場人物はユニークな人たちばかり。たとえば、ミミズ人間という人間が存在しています。彼らは、肌が赤紫色をしていて、手からは粘液が出るので壁を自由に登れる。
こうした、普通では有り得ない設定の人間たちが、それぞれの物語で誰かしら登場します。
そのため、各話でそれぞれの特殊設定ミステリを味わえるようになっています。どれも論理展開がしっかりしているだけではなく、多重解決もある。パズラーにはたまらない作品でしょう。
5.『東京結合人間』
生殖のために男女が身体を結合させ「結合人間」となる世界。結合の過程で一切嘘が吐けない「オネストマン」となった圷は、高額な報酬に惹かれ、オネストマン7人が孤島で共同生活を送るドキュメンタリー映画に参加する。しかし、道中で撮影クルーは姿を消し、孤島の住人父娘は翌朝死体で発見された。容疑者となった7人は正直者のはずだが、なぜか全員が犯行を否定し…!?特殊設定ミステリの鬼才が放つ、狂気の推理合戦開幕!(「BOOK」データベースより)
人間の生殖をするためには、人間同士が結合をしないといけなくなった世界。その行為の影響で、千組に一組の割合で、嘘がつけない人間(結合人間)になってしまうことがあるのだった。
そんな結合人間は「オネストマン」と呼ばれていた。
そんな、オネストマンだけを集めて、孤島でのドキュメンタリーが撮影されることになったのだが、そこで死体が発見される。しかし、全員が容疑を否定するのだった…。
嘘がつける人はいないはずなのに、なぜ全員が殺人犯ではないと主張しているのか?
ザ・特殊設定ミステリというタイプのミステリだと思います。嘘をつけない人しかいないのに、なぜ人殺しができてしまったのか。設定を活かした論理展開が鮮やかで、推理パートは唸りが止まりませんでした。