辻堂ゆめ『僕と彼女の左手』を紹介します。伏線回収とその先にある心温まる真実が素晴らしい作品。これが辻堂さんの特徴ですが、今作はよりハートフルな作品になっていました。
幼い頃遭遇した事故のトラウマで、医者の夢が断たれた僕。そんな時に出会ったのは、天真爛漫な少女・さやこだ。彼女は左手でピアノを弾く、不思議な子だった――。《欠陥》をもつ二人が奏でる、爽やかな青春恋愛ミステリ!
ある出来事にトラウマを抱えている男子学生・習。彼が出会ったのは、左手しか使えない女性・さやこだった。2人が奏でる物語が素晴らしい人間ドラマでした。
医学部生と教師を目指す少女
幼い頃の出来事が原因で、医学部の授業に出られなくなってしまった習。ある日、彼は大学の屋上で左手しか使えない女性・さやこと出会います。彼女は教師を目指して、受験勉強に励んでいるのでした。
そして、さやこはピアノを左手だけで弾く特技も持っていました。ハンデを抱えながらも夢に向かうさやこと出会い、習は自分を奮起させようとするのでした。そして二人は少しずつ親密な仲になっていくのですが…。
二人の仲が不穏な感じへ
ある日から事態は徐々に不穏な気配になっていきます。習が連絡を送っても、さやこからの連絡が返ってこなくなってしまうのです。
自分が出会った女性は本当はいなかったのではないか。夢でも見ていたのではないか。このように習は考え始めてしまいます。さやこはなぜ連絡を途絶えさせてしまったのか。この謎が明らかになる時、とても心が温かくなる真実を私たちは目の当たりにします。
この展開には胸が締め付けられましたね…。素晴らしかった…。
最後に明らかになる“ある真実”
最初からとんでもない仕掛けが施されていて、物語の終盤で一気に回収されていきます。何となく「こうかな?」は想像できてしまうかもしれません。ただ、完璧に予想することはできないはず。見えていない真実が多すぎました。
そして、すべてがわかると心が温かくなる作品。終盤は素晴らしすぎて、ページをめくる手が止まりませんでした。
また、最後の最後まで気を抜かずに読み切ってください。ラストでとんでもないどんでん返しも待っています。個人的にはこのシーンが一番鳥肌立ちました。
この仕掛けがわかると、再読したら全く違う心持ちで本を読めると思います。ミステリ好きはもちろん、ほっこりする話が好きな人にも読んで欲しいです!