毎年4月に発表される、書店員が選ぶ本の大賞。それが本屋大賞です。
1月にノミネートの10作品が発表されるのですが、今回はその前に、独断と偏見でノミネート10作品を予想してみようと思います。
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本屋大賞とは何?
ノミネート作品の予想に入る前に、まずは、本屋大賞とは何か?を簡単に説明します。
本屋大賞とは、書店員が選ぶ賞として、2004年からスタートしました。一般の文学賞とは異なり、作家や文学者が選考に入ることはない。その名の通り、本屋が選ぶ本の大賞です。2025年では、2023年12月1日~2024年11月30日までに出版された書籍が対象となっています。
本屋大賞ではまず、全国の書店員が3冊の本に投票をします。この一次投票の期間は12月1日~1月5日まで。ここで選ばれた上位10作品がノミネート作品として発表されます。
続いて二次投票が始まって、その中で1位だった本が大賞に選ばれるようになっています。
今回は、一次投票で選ばれるであろうノミネート作品を10冊、予想してみます!
【2025年本屋大賞】ノミネート10作品の予想
それでは、ノミネート発表を前に、私の予想をつらつらと紹介していきたいと思います。
1.早見和真『アルプス席の母』
秋山菜々子は、神奈川で看護師をしながら一人息子の航太郎を育てていた。湘南のシニアリーグで活躍する航太郎には関東一円からスカウトが来ていたが、選び取ったのはとある大阪の新興校だった。声のかからなかった甲子園常連校を倒すことを夢見て。息子とともに、菜々子もまた大阪に拠点を移すことを決意する。不慣れな土地での暮らし、厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子。果たしてふたりの夢は叶うのか!?
補欠球児の青春を描いたデビュー作『ひゃくはち』から15年。主人公は選手から母親に変わっても、描かれるのは生きることの屈託と大いなる人生賛歌! かつて誰も読んだことのない著者渾身の高校野球小説が開幕する。
高校野球を題材にした作品。母と息子の物語として感動したという声も多く、一時期は本屋さんで見ない日はなかったような印象です。
保護者の立場から高校野球を描き、大変さだけではなく、喜びなどの感情も描いているようです。親への感謝もしたくなる物語ということで、本屋大賞にノミネートされるのではないかと思います。
2.池井戸潤『俺たちの箱根駅伝』
古豪・明誠学院大学陸上競技部。箱根駅伝で連覇したこともある名門の名も、今は昔。
本選出場を2年連続で逃したチーム、そして卒業を控えた主将・青葉隼斗にとって、10月の予選会が箱根へのラストチャンスだ。故障を克服し、渾身の走りを見せる隼斗に襲い掛かるのは、「箱根の魔物」……。
隼斗は、明誠学院大学は、箱根路を走ることが出来るのか?
一方、「箱根駅伝」中継を担う大日テレビ・スポーツ局。
プロデューサーの徳重は、編成局長の黒石から降ってきた難題に頭を抱えていた。
「不可能」と言われた箱根中継を成功させた伝説の男から、現代にまで伝わるテレビマンたちの苦悩と奮闘を描く。
半沢直樹シリーズで有名な池井戸潤さんの最新作。箱根駅伝を選手の目線、届ける人の目線で描いた上下巻の物語です。マラソンをテーマにした作品は数あれど、やはり池井戸潤さんの作品は話題になりますね。
こちらも、本屋さんで平積みになっていることが多いので、ノミネートはされると予想します。
3.阿部暁子『カフネ』
一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。
弟が急死した女性は悲嘆にくれていた。そんな中で、家事代行サービスの会社に勤めている、元恋人のせつなと出会う。食べることを通じて、距離を縮めていくふたり。
料理の温かさから、心にも優しさがしみわたってくるような作品のようです。作中に出てきた料理のレシピをまとめている冊子が、本にはついてくるようです。SNSでも話題になっていたこともあり、ノミネートされるのではないかと予想します。
4.山口未桜『禁忌の子』
救急医・武田の元に搬送されてきた、一体の溺死体。その身元不明の遺体「キュウキュウ十二」は、なんと武田と瓜二つであった。彼はなぜ死んだのか、そして自身との関係は何なのか、武田は旧友で医師の城崎と共に調査を始める。しかし鍵を握る人物に会おうとした矢先、相手が密室内で死体となって発見されてしまう。自らのルーツを辿った先にある、思いもよらぬ真相とは――。過去と現在が交錯する、医療×本格ミステリ! 第三十四回鮎川哲也賞受賞作。
救急医の武田のもとに、自分と瓜二つの男性が病院に運び込まれてきた。自分は双子ではないはずなのに、なぜこんなにも似た人がいるのか。ここから始まる連続殺人、犯人は一体誰なのか?そもそも何が起こっているのか?
話が気になる、ぐいぐいと読み進めたくなるストーリーが素晴らしい作品。今村昌弘『屍人荘の殺人』と同じく、鮎川哲也賞を受賞したデビュー作です。話題の一冊でもあるので、こちらも本屋大賞ノミネートを予想します。
5.小川糸『小鳥とリムジン』
主人公の小鳥のささやかな楽しみは、仕事の帰り道に灯りのともったお弁当屋さんから漂うおいしそうなにおいをかぐこと。人と接することが得意ではない小鳥は、心惹かれつつも長らくお店のドアを開けられずにいた。
十年ほど前、家族に恵まれず、生きる術も住む場所もなかった18歳の小鳥に、病を得た自身の介護を仕事として依頼してきたのは、小鳥の父親だというコジマさんだった。病によって衰え、コミュニケーションが難しくなっていくのと反比例するように、少しずつ心が通いあうようにもなっていたが、ある日出勤すると、コジマさんは眠るように亡くなっていた。その帰り、小鳥は初めてお弁当屋さんのドアを開ける――
『食堂かたつむり』『ライオンのおやつ』に次ぐ、3部作の3作品目とも謳われている作品。今回は恋をテーマにした作品になっているようです。
父だというコジマさんが亡くなったことをきっかけに、あるお弁当屋さんの男性と出会うことになる。この物語に出会えてよかった、10代のうちに読めて良かったという感想もある本作。本屋大賞でよくある、心に刺さる・グッとくる物語だと思います。
6.森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋』
「天から与えられた才能はどこへ消えた?」
舞台はヴィクトリア朝京都。洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが……まさかの大スランプ!?
謎が謎を呼ぶ痛快無比な森見劇場、ついに開幕!
シャーロック・ホームズが主人公ではあるが、ミステリーではないようです。森見登美彦さんの作品らしさが全開で、京都にやってきたシャーロック・ホームズと作中の登場人物たちの物語のようです。
7.恩田陸『spring』
自らの名に無数の季節を抱く無二の舞踊家にして振付家の萬春(よろず・はる)。少年は八歳でバレエに出会い、十五歳で海を渡った。同時代に巡り合う、踊る者 作る者 見る者 奏でる者――
それぞれの情熱がぶつかりあい、交錯する中で彼の肖像が浮かび上がっていく。
彼は求める。舞台の神を。憎しみと錯覚するほどに。
一人の天才をめぐる傑作長編小説。
バレエを題材にした青春小説のようで、『蜜蜂と遠雷』を彷彿とさせます。音楽が聞こえてきたような感覚で、踊りが絵として浮かんでくるような一冊を想像してしまいます。
構想にも長い年月がかかっているようで、読んだ人の評判も高い物語。恩田陸さんは過去に2回の本屋大賞を受賞していますが、今回もノミネートして、3回目となるのかを楽しみにしたいです。
8.朝井リョウ『生殖記』
とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。
『正欲』以来の長編作品。今回はあるものの目線で、ヒトの人生・生殖についてを描いた物語です。朝井リョウさんのエッセイのような語り口で話は進んでいき、スラスラと読めてしまいます。
軽い語り口なのに、テーマは重め。『正欲』と近い題材ではあるものの、中身がライトなのでスラスラ読めるし、ブラックユーモアがより際立っています。
9.宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』
成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー主婦、観光大使になるべく育った女子大生……。個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!? 読み応え、ますますパワーアップの全5篇!
前回の本屋大賞作品となった『成瀬は天下を取りにいく』の続編。女子大生になった成瀬と、その周囲の人たちの物語。前作同様に、自分を貫いている成瀬のカッコよさは健在です。
SNSでも話題にあがることが多かった作品で、今回も本屋大賞ノミネートはされるのではないかと思います。わが道を突っ走るという様子に元気をもらえるし、晴れやかな気分になれる作品した。
10.松永K三蔵『バリ山行』
会社も人生も山あり谷あり、バリの達人と危険な道行き。圧倒的生の実感を求め、山と人生を重ねて瞑走する純文山岳小説。
芥川賞を受賞した作品。登山をテーマにした物語で、社内の登山グループの活動で山登りをすることになった男性の物語。登山から生きることを描いた物語のようで、芥川賞発表後に、大きな話題になった作品です。
ノミネート作品の発表は2月3日
以上の10作品がノミネート作品の予想です!
この他の予想だと、首相暗殺事件についてを描いた小説・柴田哲孝『暗殺』や、ホラー作品の盟主、貴志祐介さんの最新作、『さかさ星』。
メフィスト章を受賞して話題になった金子玲介さんの『死んだ山田と教室』。
前作が話題になった呉勝浩『爆弾2 法廷占拠』、本屋大賞ノミネートの常連、青山美智子さんの『人魚が死んだ』などもあり得るかなと思います。
ノミネート発表は2025年2月3日(月)だそうなので、ゆっくりと待っていようかなと思います。
発表され次第、ノミネート作品を読んでの順位予想もやるので、今から楽しみです。皆さんのノミネート予想はどうでしょうか?