新本格ミステリ。
とんでもないどんでん返しが、最後に用意されていることの多いジャンルです。
【感想】たった1行で世界がひっくり返る(綾辻行人『十角館の殺人』)論理的に犯人を追及していくものの、とんでもない真実が浮かび上がってきます。
どんでん返しがある以上は、「ズルい」「アンフェアだ」という意見もつきまといます。
主には、小説ならではのトリックですが、個人的には好きなジャンルです。
今回はその中でも、特にうまくしてやられた作品を紹介します。
倉知淳『星降り山荘の殺人』です。
雪に閉ざされた山荘に、UFO研究家、スターウォッチャー、売れっ子女性作家、癖の強い面々が集められた。
交通が遮断され電気も電話も通じなくなった隔絶した世界で突如発生する連続密室殺人事件!
華麗な推理が繰り出され解決かと思った矢先に大どんでん返しが!?
見事に騙される快感に身悶えする名作ミステリー。(「BOOK」データベースより)
よくあるクローズドサークルなのだが
本作の舞台は大雪で孤立を余儀なくされた山荘。
いわゆるクローズドサークルです。
広告代理店で働く杉下は、上司とのトラブルが原因で左遷されてしまいます。
左遷先での仕事は、スターウォッチャー・星園のマネージャー業務。
星園は文化人として人気のタレントでした。
星園の仕事として、彼らはオープン前の山荘を訪れます。
イベントでは、小説家やUFO研究家らが集まっていました。
その山荘で事件は起きました。
招待主の会社の社長が何者かに殺害されたのです。
助けを呼ぼうにも外は大雪。この中に犯人がいるのなら探し出そう。
杉下と星園は推理を始めるのでした。
ナレーションがあるので読み進めやすい
本作には少し変わった演出が施されています。
章の冒頭にナレーションがついています。
例えば、小説の1番最初のシーン。
まず本編の主人公が登場する
主人公は語り手でありいわばワトソン役
つまり全ての情報を読者と共有する立場であり
事件の犯人では有り得ない
このように、各章がどのように進んでいくのか?を明記しています。
「何のための章なのか?」がわかりやすくなっています。
こうした演出のおかげですんなりと物語に入っていけるでしょう。
嘘偽りが一切ないからスゴイ
冒頭でお話の通り、本作のどんでん返しはとんでもないです。笑
普通、思いついてもやらないんじゃないかってくらい繊細に練られています。
もっとも感服したポイントは、読者に対して嘘が一切ないということ!
一般的な叙述トリックは騙す仕掛けが各所に施されています。
本作は(もちろん仕掛けはあるのですが、)嘘をつかずにしっかり騙してくれます。
あまりにもストレートな仕掛けに、つい「ふざけんな!」と思ってしまうことでしょう。笑
Amazonのレビューがあまり良くないのですが、個人的には大好きな騙し方でした。
映像化したら良い感じになるんじゃないかなとも思います。
どんでん返し系も一通り読んで、何となくトリックのタネに気付き始めた人にはオススメです。
そういう人ほど、このトリックには気づけないことでしょう。
新しい騙され方をぜひ堪能してみてください!