SFミステリと聞くとどんなイメージを浮かべますか?
「魔法とかが頻出してよくわからない…」
「犯人の意外性があまりないし、あってもインパクトに欠ける…」
「とんでも設定を利用して事件が解決して、驚きが少なそう…」
このような意見を耳にしたことがあります。そして、わからなくはないです。ただ、今回紹介する作品はそんなことありません。どんでん返しの連続に加えて、驚愕のラストは誰にでも満足してもらえるはず。
1,000冊以上読んできた私が最も好きな長編小説。
米澤穂信『折れた竜骨』です。
ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた……。自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、「走狗(ミニオン)」候補の八人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年――そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ?魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?現在最も注目を集める俊英が新境地に挑んだ、魔術と剣と謎解きの巨編登場!(「BOOK」データベースより)
Contents
設定ありきの本格ミステリ
中世ヨーロッパを舞台にした本作。
殺人事件の犯人は誰か?という謎を解き明かす本格ミステリです。
ただし、SF要素の入った設定ありきのミステリになっています。
そして、この設定が小説をめちゃめちゃ面白くしてくれています。
本作では、殺人事件の犯人は自覚を持っていません。
暗殺騎士という魔法使いによって操られた人物、走狗(ミニオン)が犯人なのです。
しかし、走狗には殺人をした記憶がありません。
主人公のファルクは、自覚のない8人の容疑者から該当者を探さないといけないのです。
そして、魔法をかけた暗殺騎士は誰なのか?
これらの謎を解き明かすのが本作なのです。
犯人捜しは論理的
自覚のない犯人をどのように探すのか?
犯人に罠をかけたり、知りえない情報から犯人を絞り込むなどの手法はできません。
そのため、通常のミステリではないアプローチで本作は犯人を見つけ出そうとします。
ひとりひとりを犯人ではあり得ないから除外する。という消去法でアプローチをしていくのです。
最後は、論理的に構築された推理で走狗に迫ります。
驚きと納得感のあるラストが素晴らしかったです。
まさに設定をうまく利用した、驚愕のSFミステリです。
まとめ
走狗探しが大きな謎の本作ですが、それ以外にも驚きポイントはたくさんあります。
犯人足り得ないから、要素が伏線になっているので、どんでん返しがちょいちょい起こります。笑
本格ミステリ好きな人には、ぜひ手に取ってほしい小説です。