独自の世界観と特殊な設定のもとで起こる事件。
『いなくなった私へ』でデビューを飾った辻堂ゆめさん。
第13回『このミステリーがすごい!』大賞で優秀作を受賞しました。
【感想】驚愕のラスト!自分が認識されない理由とは?(辻堂ゆめ『いなくなった私へ』)デビュー作では、誰も自分を認識してくれない世界。
かつ自分が死んだことになっている状況の答えを探そうとするミステリでした。
今回は、デビュー作に近い設定の物語を紹介します。
『今、死ぬ夢を見ましたか』です。
井瀬は電車の中で、駅のホームから何者かに突き落とされて、親友の五味淵と共に死ぬ夢を見た。
隣に乗り合わせた女子高生・紗世は夢の内容を当て、さらに自分も同じように電車に轢かれた夢を見たことがあると告白する。
電車で見た夢は必ず自分の身に起こると言う紗世の言葉通り、夢は次々と現実になり―。
紗世の制止を振り切り、井瀬は自分たちの死を回避すべく奔走する!(「BOOK」データベースより)
自分が死ぬ夢を見た主人公
電車に乗っていた井瀬は、不思議な夢を見た。
それは、会社の同僚である五味淵と共に、電車に轢かれて死ぬ夢だった。
不吉な夢に嫌な気分になるが、追い打ちをかけるように1人の女子高生が夢の内容を当ててくる。
しかも、これは予知夢で、未来を変えることはできないと…。
半信半疑の井瀬だったが、その後も到底信じられない夢を見ては、同じことが現実で起こってしまう。
そして、夢を言い当てた女子高生・紗世も自身が死ぬ夢を見ているというのだ。
自分と彼女を救うために、井瀬は躍起になるのでした。
騙そうとしているのはどっち?
時を同じくして、旧友の粕谷から、五味淵には近づかない方が良いと忠告を受けます。
何でも五味淵は真っ当な商売をしていないからだという。
五味淵の会社で雇われている井瀬は、聞く耳を持ちません。
粕谷の方こそ自分を騙そうとしていると思ったからでした。
果たして、どちらが自分を騙そうとしているのか?
これらの出来事は予知夢に関係をしているのか?
井瀬は頭を巡らすのでした。
悲しくも美しいラスト
そもそも、なぜ予知夢を見れるのか?は謎ではありません。そういう設定です。笑
そして、予知夢通りにならないように井瀬は未来を変えようと動きます。
その過程で起こる人間ドラマは、読んでいて気分が良くなるものではありませんでした。
というよりは、この辺の驚きポイントはそれほどでもなかったです。
ラストのどんでん返しのために、わざとそうしていたのかなという気もしましたが。
井瀬、五味淵、粕谷との関係と予知夢への繋がり。
正直ここには、大きな驚きはありませんでした。(個人的にはもうひとひねり欲しかった…)
ただ、別角度からやってきた伏線回収にしてやられました。
言われてみれば気づきそうなのに、この発想はありませんでした。
悲しい。けれど美しい。
個人的にはとても好きな展開でした。
デビュー作も二作目も似たようなテイストを纏ってますが、ラストの展開は本作が結構好きでした。
驚きの中にある悲しい真実を目撃してほしいです!