今回は「このミステリーがすごい!」大賞の受賞作品を紹介します。
映画化、ドラマ化された人気作品『チームバチスタの栄光』もこの賞が出身です。
これまでにもいくつか取り上げてきましたが、どれも変わった設定や独自の驚きポイントを用意してくれていました。
【感想】美しいスポ根+どんでん返し(中山七里『さよならドビュッシー』) 【感想】驚愕のラスト!自分が認識されない理由とは?(辻堂ゆめ『いなくなった私へ』)今回紹介する作品は、SF要素たっぷりの小説。
乾緑郎『完全なる首長竜の日』です。
第9回『このミス』大賞受賞作品。植物状態になった患者とコミュニケートできる医療器具「SCインターフェース」が開発された。
少女漫画家の淳美は、自殺未遂により意識不明の弟の浩市と対話を続ける。
「なぜ自殺を図ったのか」という淳美の問いに、浩市は答えることなく月日は過ぎていた。弟の記憶を探るうち、淳美の周囲で不可思議な出来事が起こり―。衝撃の結末と静謐な余韻が胸を打つ。(「BOOK」データベースより)
綾瀬はるか&佐藤健の豪華コンビで映画化もされている本作。
Amazonのレビューではだいぶ好き嫌いが別れている印象です。笑
以下で小説の感想と見どころをつづっていきます。
記憶(夢)を舞台にしたミステリ
人気漫画家の淳美は、定期的に病院に通っていた。
自殺を図って昏睡状態になってしまった弟・浩一を見舞うためです。
意識がない弟と接点をとるために、彼女は「センシング」という方法で弟と会話をします。
弟の記憶の中で会話をする淳美。
自殺の理由を尋ねると決まって、シャットダウンが起こります。
どうして、弟は自殺をしてしまったのか?
そして、センシングを使っていた淳美は、現実世界でもセンシングにいるような感覚になるときが起こり…。
夢か現実かわからなくなる作品
センシングの世界と現実の世界が入り乱れる本作。
後半は、日常生活でもセンシングのようなシーンが増えてきます。
そのため、後半は何が夢で何が現実なのかわからないです。笑
本当にこれは現実で起こっていることなのか?
センシングの世界なのか?
この辺も絡めてミステリなので、混乱しながらも楽しめる物語です。
そして、最後の最後には自殺の謎とともに、意外な真実も明らかになります。
本作の面白さは何?
夢のような非現実的な要素を含んだミステリという点。
賛否両論が多いのは、この部分の描写が無駄に長いと思うからみたいです。笑
また、読んでいて混乱が多いのもその一因でしょう。
ただ、この設定をうまく用いたラストのどんでん返し。
そして、緻密に計算されていた伏線の回収。
個人的には面白い小説でした。
特に「インセプション」という映画を好きな人は気に入るはずでしょう。
気になる人は是非読んでください!