たかひでの本棚
伊坂幸太郎『ホワイトラビット』を紹介します。時間と場所が交錯して描かれている本作。と言っても、いつどの場面を描写しているのかは、記載されているので混乱することはありません。そして、この構成で、とんでもない仕掛けをしているのです。
楽しさを追求したら、こういう小説になりました。最新書き下ろし長編は、予測不能の籠城ミステリーです! 仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件。SITが出動するも、逃亡不可能な状況下、予想外の要求が炸裂する。息子への、妻への、娘への、オリオン座への(?)愛が交錯し、事態は思わぬ方向に転がっていく――。「白兎事件」の全貌を知ることができるのはあなただけ! 伊坂作品初心者から上級者まで没頭度MAX! あの泥棒も登場します。
テンポの良い会話＆後半の伏線回収に定評のある伊坂さん。デビュー作の『オーデュボンの祈り』や『アヒルと鴨のコインロッカー』というファンからの評価の高い、この作品にも匹敵するほど面白かったです！
何がそんなに凄かったのかというと、書かれている通りに作品を思い浮かべていたのに、現実は全く異なる世界だったのです。
仙台で起きた立てこもり事件
本書のメインは仙台で起きた立てこもり事件・「白兎事件」です。ある家に押し入った強盗が、警察に対して、探している人を連れてくるように命令します。
この事件の背景では何が起こっていたのか？
これらを描いているのが本作なのですが、裏で起きていたことがスゴイ。この事件を様々な人の視点＆時系列で書くことで、華麗に読者を欺いてくれます。
私はただ、本に書かれている通りの世界を想像していました。それなのに、実際に描かれていたのは全く別の世界。あまりにも上手な仕掛けに驚きでした…。
キャラクターの魅力も健在
伊坂作品は、登場人物がとても魅力的という点も人気の理由です。本作でも、エッジの立ったキャラクターがたくさん出てきます。
誘拐を生業にする男や、不運な人生を送る青年。そして、伊坂作品ではおなじみの黒澤。彼らの織り成す、愉快な会話や軽快なストーリー展開は、今作でも健在でした。
どこか変だけど憎めないキャラクターたちに、気付いたら感情移入している。どうにか幸せになってほしいと願ってしまうことでしょう。
どんでん返しは今作にも
前半からじっくり仕込まれていた伏線の数々。それらが中盤以降にかけて少しずつ回収されていきます。一気ではないので、一つ一つネタバラシされていくような展開なのです。
「え、それってそんなことだったの？」
「さっき思ってたことと全然違うじゃん！」
このような驚きが中盤からはずっと続きます。ページをめくるたびに新展開が起こり、読んでいて飽きが全く来ませんでした…。それどころか、読み返したくなるくらい、練りに練られた仕掛けが最高過ぎました。
どんでん返しに次ぐ、どんでん返しで誰もが虜になること間違いなし。前半は説明要素が多いかもしれませんが、余分なことは一切ありません！何もかもが最後には一つになる。この爽快感を是非、味わってください！
